音楽つれづれ日記

音楽好き、飽き性、そして中庸思考。

ベンヤミン・ヌス ピアノリサイタルへ行ってきた

いきなりなのですが、サガフロンティア2の話をします。


発売当時に購入してPSの本体の電源を入れてゲーム画面が登場した瞬間から、

その世界観にひきこまれたことをよく憶えています。

世界観のいち役を担っている音楽を担当されたのは浜渦正志さん。

極限までフレーズを絞って音楽を作られたという、かなり野心的な作品です。

そんなこともあり賛否入り乱れた意見が当時も出ていましたが、

その完成度はサガシリーズの中でも随一ではないか、

と思わせるだけの説得力があったように思います。


そんなサガフロ2、楽曲の人気もかなり高いようです。

私自身それほどやりこんだゲーム、というわけではないのですが、

浜渦さんのファンの間でも一二を争う人気タイトルとなっています。

特にラスボス戦闘時の「Mißgestalt」は特に人気が高く、

Twitter上で今年行われた「浜渦ベスト7」という企画でも一位となったことは記憶に新しいです。

で、その「Mißgestalt」なのですが、

この曲をピアノ・ソロで演奏されるとしたらどうなるのでしょう。

そしてその曲を演奏できる人はこの世に存在するんでしょうか。



そこで話を2012年の8月に戻します。


「EXOTICA」というアルバムが海外で発売されました。

そのアルバムに楽曲「Sanzui」を提供されたのが浜渦さんです。

日本でも輸入盤が購入できるのですが、そのピアノアルバムのアーティストこそ、

今回の公演の主役であるベンヤミン・ヌスその人なのです。

とある小さなホールで行われた「EXOTICA」の楽曲を演奏するピアノリサイタル、

その衝撃はとても言葉で表すことができないものでした。

そこから追っかけのようになってしまったことは言うまでもないと思います(笑)



そして翌年9月、満を持して「Pianoschlacht」公演が行われます。

前回のそれと大きく違うのは浜渦さんの楽曲作品のみを演奏するというところです。

東京公演は参加できなかったのですが、宝塚公演と救済公演は参加いたしました。

(詳細については以前のブログ参照)

そこで初演された「Etude Opus4」が圧倒的な存在感を放っていました。

超絶技巧という言葉が生ぬるく感じてしまうくらいの難曲を軽々と弾きこなしているようにみえたのです。

ベンヤミンさんのテクニックの高さが際立って見えました。

ああ、すごい、すごすぎる、と興奮してサイン会で何を話したのか覚えてません(笑)



とまあ駆け足になってしまいましたが、これまでの経緯を書いてみました。


浜渦さんとベンヤミンさんの信頼関係というか絆というか、

そういうものを、音楽を通して感じることが出来たこの2回の公演。

そして、満を持して昨年の「Pianoschlacht」に続く室内楽公演が先日開催されました。



ベンヤミン・ヌス ピアノリサイタル

Pianoschlacht II mit Kammermusik ~浜渦正志作品集~


12月21日(日)関西公演

ローゼンビート・クライネルザール (兵庫県尼崎市

1st   15:00

2nd  18:30


12月23日(火・祝)東京公演

音楽の友ホール (東京都新宿区)

1st  13:30

2nd  18:00


<出演>

Piano ベンヤミン・ヌス  Benyamin Nuss

Violin 桑野聖  Hijiri Kuwano

Cello 結城貴弘  Takahiro Yuki


<演目>

Etude Op.4 No.1~No.12

ポレットのイス


Atmosphäre No.1~3

Music from Sony α CLOCK

Frenzy under Pressure

Impromptu Furioso

Giant

閃光

Elf

Music from Legend of Legacy(東京公演のみ)

Missgestalt




最初この公演の詳細をTwitterで知った時、東京公演のみ行こうと思っていました。

プレミアム席というのが用意されていてそちらの方が即完売になると思っていたのですが、

仕事の合間に運良く「Elf sitz」(1,100円)のチケットを手に入れることが出来ました。

そのチケットを手に入れたことが気を良くしてしまった私は、

初演となる関西昼公演のチケットも同時に予約してしまったのです。


東京公演は即日完売、関西公演もかなり売れていたようです。

結局その完売を受けて、当時1公演のみだった東京公演が、

追加公演として夜公演も行われることとなりました。



真面目な話なのですが、

本来生演奏というのは一期一会なものだと思っています。

録画、録音などされていない環境で、

ただの一度、その時だけ演奏されるたったひとつのもの。

そういうわけで、本当なら一度の公演で十分だと思うんです。

他に沢山行きたい人がいるのに、1人で時間帯や場所の違う公演を行くことは、

そういう一期一会の精神に反することなのではないか、なんてことも思うんです。


でも、チケットが残ってたら行ってしまうのもまた事実です・・・

私はその誘惑に勝てませんでした。

今後はこういうことをなるべくしないようにしようとは思いましたが。


そんなわけで余談が過ぎましたが、

関西公演のチケットも入手してしまいました。



そして関西公演前日(20日)に関西入りします。

実はその日、とある演奏会が大阪で行われることになっており、

それに参加するために前日いりしたというわけです。

その演奏会についてはまた別途ブログで書きたいと思います。




そして関西公演当日。

実家に泊まってゆっくりして、会場近くのスーパー銭湯で身体を清めて、

会場前についたのが13:30頃、開場1時間前でした。




一番乗りしたのですが、諸般の事情で列後方へ。


余談ですが前回の宝塚公演でも一番先頭に並んでいました(笑)


そして雑談などをしつつ会場入り。



私は前から4列目中央左側にいました。

その前に背の高い人がいたのですが、私も座高が高かったので、

それほど苦もなくベンヤミンさんの指使いやペダリングを確認できました。


そして開演時間となったのですが、

演者が登場せずただ時間だけが過ぎていきます。

その後ちょっとしたアクシデントがあったのですが、

ここで詳細を話すことが出来ません。

主催者側から「書かないで欲しい」と言われたのでw

ともあれ、トータルで15分ほど開演が遅れました。


それに付随して前半ちょっとしたハプニングのようなものがあったのですが、

それは23日にTwitterでつぶやいていますので、

そちらを参考にしていただけると幸いです。

ここではそのハプニングには言及いたしません。



100席ほどの小さなホール。舞台と座席の距離も相当近かったです。

浜渦さん関連の公演ではおなじみの方々を目の端に捉えつつ、

じっと待っていると会場後方中央からベンヤミンさんが颯爽と登場します。

口元を引き締めつつ舞台へと歩き、ピアノの前で振り向くと少し笑みを浮かべながらお辞儀。

その後始まったのが超絶技巧曲集「Etude Op.4」でした。


Etudeというのは「練習曲」という意味なのですが、

この場合その意味には当てはまらないのではないか、と思ってしまうくらい、

この曲難しいです。私は演奏できません(笑)

No.1~12まであるこの曲、どれも印象的なのですが、

私が好きなのはNo.6、7、8あたりですかね。

この演奏会に行くまでは4、11、12あたりが好きだったのですが、

関西公演でNo.6を聴いて泣きそうになるくらい感動したのです。

そこからガラッと好みが変わってしまいました。


12曲の演奏が終了し、続いて演奏されたのは「ポレットのイス」です。

Youtubeでも映像が投稿されていますが、

フジテレビ系の深夜アニメ枠「ノイタミナ」の10周年を記念して作られた短編アニメです。

セリフが全くなく、映像と音楽のみで語られる作品なのですが、

その音楽全編を担当されたのが浜渦さんです。

ちなみにその楽曲でピアノを演奏されているのはベンヤミンさんです。

そんな「ポレットのイス」ですが、ミニアルバムが発売されていて、

その中にピアノアレンジバージョンが収録されています。

今回の演奏会で演奏されたのはそのピアノソロバージョンでした。

個人的にはヴァイオリン、ビオラ、チェロが入った完全版も聴いてみたいと思いましたが、

こちらのピアノソロバージョンもとても素晴らしく、やはり泣いてしまいました・・・

アルバムでいうところの2曲目の盛り上がり部分、

映像では主人公が椅子に乗って草原を駆け抜けているところの音楽が大好きで、

いつもそこの音楽がかかるたびに条件反射的に泣いてしまうんです(笑)



そして休憩。

飲み物を飲もうと外にでると、IMERUATのVocalでもあるMinaさんが。

今回の公演でスタッフとして参加されていたんです。

私の顔を憶えていてくださっていて「ああ、視線の人!」と声をかけてくださいました。

少しの時間でしたがお話出来てとても嬉しかったです。


※視線の人というのは、IMERUATの最初のワンマンライブで終演後サイン会があったのですが、その時時間がなかったらしくかなり慌ててサインをしていたせいで浜渦さんが下を向きっぱなしで私と全く視線を合わせてくれなかったんですね。で、そのことをネタとしてTwitterで呟いたら浜渦さんとMinaさんがリプをくれたんです。その後もお会いするたびに「視線の人」とか「視線さん」という認識で覚えられているという次第です(笑)



後半がはじまります。

ここから弦楽器が加わって音色が更に変化しましたね。

最初はバイオリン。桑野さんが登場します。

私自身室内楽はとても好きで、中でもバイオリンソナタは大好物なので、

ここからの演奏はとても期待しておりました。


Atmosphäre No.1~3は10分足らずの小品曲。

桑野さんが肩にハンカチを置いて演奏をされていたのですが、

最後の3曲目の出だしでいきなりハンカチを落とすハプニングが。

そのまま桑野さんは何食わぬ顔で演奏されていました。

楽曲は静かなピアノの前奏からヴァイオリンが流れるように旋律を奏でつつ進んでいきます。

2曲目はリズム主体の曲という印象でした。難易度が格段に上がった印象。

この曲を聞くとハイドンの「驚愕」を思い出してしまうのですが、何でなんでしょう。

3曲目はやや激しい旋律が登場します。桑野さんの表情が少し引き締まって見えたのは、

気のせいではないのでしょう。

特徴的なパッセージが続くのですが、中間部でピアノが遊ぶような旋律を奏でます。

そこにヴァイオリンが旋律にまとわりついたり離れたりしながら進み、

最後はヴァイオリンの物憂いソロで幕を閉じます。


実はこの後の曲もピアノとヴァイオリンによる楽曲だったのですが、

どうやら未使用曲だったらしく、ちょっと印象が薄くて覚えてません。

すいません・・・

Sony α CLOCKというサイトの楽曲ということらしいのですが、

実は未だに一度も見たことがないんです。ほんとすいません・・・


というわけで話を戻します。


Frenzy under Pressureから閃光まで4曲連続でトリオでの演奏。

ここからチェロの結城さんも加わって更に音色が変化していきます。


特に即興曲アンプロンプチュ)は私の中で大好きな曲なので泣きそうになったんです。

出だしのアグレッシブな感じから最後のサスペンスチック(笑)な終わり方まで、

口を半開きにして見てました。マスクしてたので周りの人には見えなかったですけども。

で、それだけ感動した後に演奏されたのが、

IMERUATの「Giant」のトリオ演奏バージョンと、

FF13の「閃光」のスペシャルアレンジでした。

もう、この二曲だけで何ヶ月分の涙を流したんだ、っていうくらいに感動しました。

CDで「Giant」の生演奏Verはさんざん聴いていたにも関わらず、です。

特に閃光のアレンジが秀逸でした。2回演奏を行った後で、

曲がトーンダウンし、FF13のプレリュードの一節が流れてきた時はもうダメでした。

そこから流れるように閃光のサビが再び流れて盛り上がった後静かに曲が終わった後、

割れんばかりの拍手が。皆これを聞きたかったのか、という思いを新たにしたものです。


その後、一度三人とも会場後方の入り口へ。

そしてベンヤミンさんがすぐ舞台に登場しすぐに演奏が再開されます。

Elfは浜渦さんの娘さんが作られた曲とのこと。可愛らしい小品でしたね。

浜渦さんにしてこの娘ありといったところでしょうか。

そのまま間髪入れずに演奏されたのが冒頭近くでも言った「Mißgestalt」です。


以前の公演でもこの生演奏は聴いていたのですが、

この関西公演での演奏はさらに音色が進化していたように思います。

特に曲の後半の打鍵部分でタップリとリズムをためながらの演奏は緊迫感がありました。

そこからサビ、Coda部へとつながっていくのですが、

その時のベンヤミンさんの表情がとても印象に残っています。

真摯な、とても真摯な表情でした。音を正面から受け止めている表情に見えました。

そこからものすごい気迫を感じたのは私だけではなかったでしょう。

ピアノを壊してしまうんじゃないかと思うくらいの気迫ある打鍵は見るものを感嘆させるに足るものでしたね。

打楽器を彷彿とさせるその演奏の最後は、

CDのそれよりもややテンポを上げたエンディング。

ゆったりとためるように連打しつつクレッシェンドしていくところから、

一気に畳み掛けるように演奏を終らせたベンヤミンさんが、神に見えた瞬間でもありました。


演奏後、ベンヤミンさんが一人ひとりの顔を確かめるように首を左右にゆっくりと動かしつつ、

軽く頷くようにしている姿は、見ているこちらも嬉しくなってしまいました。


その後アンコールが演奏され、無事に演奏会は終了。

あれだけの熱演をしたのにアンコールまで演奏しているベンヤミンさん。

本当に神々しく見えていました。すごい!!


その後会場内でサイン会が行われたのですが、その時私はCDを持ってくるのを忘れてしまうという体たらくっぷり。

仕方なく外で待機することとなりました。


その後地元の友人と共に近くのお店で食事をしつつ二次会。

これも色んな話が出来て楽しかった~!!



というわけで、関西公演はこうして無事に終了。



そしてその二日後。

私は音楽の友ホールへと足を向けます。

東京公演昼の部への参戦です。



こちらの会場では見知った人が数多く来られていました。

知ってる方が多いと嬉しいような恥ずかしいようなそんな変な気持ちになります(笑)


会場の規模が、関西公演の倍程度なのですが、

音響が素晴らしい室内楽向けのホールでした。

一番後ろの中央で演奏を聴いていたのですが、

そこまでクリアに音が届いていましたね。


室内楽を聴く場合、私はなるべく後方で演奏を聞くようにしています。

実は、以前某室内楽を聴いた時前方で聴いていたことがあるのですが、

その時、ピアノのイスが演奏中「ギィギィ」と小さく音を立てていたんです。

いわゆる「きしみ音」というやつですね。

ピアニストの体重が相当重かったことも原因の一つと思います(笑)

その音が気になってしまって演奏に集中できなかった記憶が残っていて、

そういうノイズが聞こえにくくなる後方で聴くようになりました。


そんな余談はさておき。。。



演奏の感想は関西公演と殆ど変わらないので割愛しますが、

東京公演、プログラムが少し違っていました。

来年発売予定のゲーム、「レジェンドオブレガシー」の楽曲が演奏されるというのです。

これは東京公演のみということで、ちょっとワクワクしていました。


東京公演の演奏全体を総括すると、

関西公演での不具合(というと語弊がありますけどw)が修正されて洗練されている感じ、

とでも言えばいいのでしょうか。

とてもいいホールで音が響いていて、心地よく演奏を堪能することが出来ました。


高難度の楽曲の連続にもかかわらずあれだけのクオリティの演奏が出来るっていうのは、

さすがプロだなぁ、というありきたりの感想に終始してしまうのですが(^_^;)


やはり前述の曲で涙している私がいました。



その後サイン会になります。

今回はちゃんとCDを2枚持ってきていたんですが、

時間の都合で1人1点までということだったので「Opus4」のCDにしました。

順番が回ってきてベンヤミンさんには「日曜日の公演も行きました!」と言うと、

笑顔で「ありがとうございます!」と返してくださいました。

アレだけの熱演をしたピアニストと同一人物なのか、と思わせる笑顔で、

胸がキュンとなってしまったことは秘密です。


そして隣の浜渦さんには「視線の人です」と言ったのですが最初ピンとこなかったらしく、

短めに説明すると「ああ、あの時の!」と思い出していただけました。

「いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と返されて涙ぐみそうになりましたが、

その後「じゃ、今回もじっくり見させていただきます」と二人が見つめ合うという場面が。

ほんの数秒でしたがユーモアたっぷりに対応していただいた浜渦さん、ありがとうございました!


ロビー横にはMinaさんもいらっしゃったのですが、

忙しそうだったのでお声がけできず・・・


ともあれ、会場の外へ。

そこでなぜかお菓子を配ったりハグしたり大声出したりしてました(笑)

Twitterなどでは「冷静、クール」という印象を持たれているみたいなのですが、

実際は関西生まれなのでああいうおちゃらけが大好きな人なのです。

イメージと違って幻滅された人、本当にごめんなさい。。。


その後、二次会のためアルトニアへ行ったり、

羽田空港へお見送りをしたりして結局23時頃に帰宅しました。



関西公演、東京公演とのべ2日間、浜渦さんの楽曲に浸ることができました。

主催のMONOMUSIKさん、浜渦さん、Minaさんをはじめスタッフの皆さん。

最高の演奏をされたベンヤミンさん、桑野さん、結城さん、

そしてこの二日間で出会った全ての方々へ感謝いたします。

本当に最高の演奏会でした。ありがとうございました。

また来年も、幸せな気分になる演奏会がたくさん行われることを切に期待しています!!