音楽つれづれ日記

音楽好き、飽き性、そして中庸思考。

シュデンゲン室内管弦楽団 第三回演奏会

ゲームの音楽を聴くってどういうことなんだろう、と考えることがあります。


ファミコン、いやもっとそれ以前から始まる古いゲームの歴史で、

ゲームと音楽、というのは切っても切れないものになりました。

そのゲームのBGMを聴いていると、そのゲームをしていた自分を思い出します。

それが原曲であろうとアレンジされたものであろうと、

その曲の持っている力というものは絶大なものなのです。


古いゲームの音楽は同時発声数が少なく、音色も決してキレイなものではありません。

そんな中で限定的な範囲で最大限の成果をあげてきました。

ドラゴンクエストファイナルファンタジーといった人気RPGを筆頭に、

さまざまなゲームでその限られた音色の中、試行錯誤をした歴史でもあります。



ゲームボーイが発売されたのは1989年4月21日。

今から26年前になります。

テトリスとか星のカービィとかそれこそ狂ったようにプレイしてました(笑)


星のカービィはだいぶ後で発売されたゲームですが・・・


そして、その年の暮れにゲームボーイでは初となるRPGが発売されます。


魔界塔士Sa・Ga」。


いまでも脈々と受け継がれているサガシリーズのこれが最初となります。

どちらかというとゲームプレイ層がかなり偏ったゲーム、という印象です。

が、それゆえにコアなファンも数多く存在し、不肖わたくしもそのファンの末席におります。

最初のサガ「魔界塔士Sa・Ga」の音楽を担当されたのはFFでもおなじみの植松伸夫さん。

その音楽は伝説と言われるほどのクオリティを保持し、

聴いているとあちらの世界へといざなわれるかのごとく流麗なサウンドが耳に残ります(当社比)。


そしてその翌年、人気を博した「魔界塔士Sa・Ga」の続編が登場します。


Sa・Ga2 秘宝伝説」。

前作のシステムを踏襲しつつもがらりと様相を変えたゲームでした。

何よりもストーリーがとても印象深いです。

サガ2の音楽を担当されたのは前作に続いて植松伸夫さん、

そして当時入社したばかりでこの作品がデビューとなる伊藤賢治さん(イトケン)。

二人の共作となった本作ですが、その音楽のクオリティは筆舌に尽くしがたく、

特に戦闘曲は伝説と言われるほどのクオリティを保持し、

通常戦闘曲~ラスボス曲までGBの限界に挑戦した熱い音色を奏でています。




そんな二つの作品の音楽を室内管弦楽で堪能できる演奏会が行われました。



シュデンゲン室内管弦楽団 第三回演奏会

室内管弦アンサンブル編成による魔界塔士Sa・Ga、Sa・Ga2秘宝伝説

2015年4月11日(土)

開場 15:30

開演 16:00

小松川さくらホール


演目

第一部 「魔界塔士Sa・Ga

第1楽章 「そして いま またひとり・・・」

プロローグ~メインテーマ~街のテーマ


第2楽章「わきやくは ねむってな!」

魔窟~Hurry up!~戦闘~Eat the meat~激闘~涙をふいて~禁断の塔


第3楽章「これも いきものの サガか・・・」

レクイエム~魔界塔士~最上階~怒闘


第4楽章「シー ユー アゲイン!!」

エピローグ




第二部 「Sa・Ga2 秘宝伝説

第1楽章「そしていま あらたな たたかいのものがたりが はじまろうとしている・・・」

伝説は始まる~秘宝を求めて~安らぎの大地


第2楽章「ちちは せいぎのみかただったんですね・・・」

闇の狭間で~必殺の一撃~Eat the meat~勇者のテーマ


第3楽章「きたぞ きたぞ!」

天の柱~さまよえる魂~新しき神のテーマ~死闘の果てに~あっ!!~涙をふいて~秘宝の謎


第4楽章「しょうしんしょうめい さいごのたたかいだ! みんな やるぞ!」

燃える血潮~Save the world~Never give up


第5楽章「いいじゃん みんなでいこう!」

エンディングテーマ1~エンディングテーマ2



アンコール

「Eat the meat」



主催:Melodies of Crystal

演奏:シュデンゲン室内管弦楽団





この演目を見て頂けるとおわかりの通り、

二つのゲームの楽曲をストーリー仕立てで聴くことができるわけです。


私自身はサガ2に思い入れがかなりあるのですが、

もちろん初代もプレイしておりますし、3も一応プレイはしております。

さすがに時間の都合上3は演奏されなかったようですが、

機会があればアレンジされたサガ3の楽曲も聴いてみたいところです。


今回の室内管弦楽の編成は全9人でした。

弦楽5人(Vn2、Vla1、Vc1、Cb1)と木管4人(Fl1、Ob1、Cl1、Fg1)という小編成。

打楽器もピアノもありません。

しかもその配置も少し変わっていました。


舞台中央最奥部にコントラバス。その左隣にチェロ。

そしてその左にはヴィオラ、最後にヴァイオリンが2名。

ただそれが曲線を描くように手前に向かって配置されています。

徐々に舞台の手前になるようになっていると言えば良いのでしょうか。

舞台の一番前に女性二人のヴァイオリニストが流麗な姿で立つ姿はとても凛々しかったです。


そして木管コントラバスから向かって右に配置されていました。

こちらも曲線を描きながら手前に向かうようになっています。

コントラバスの右にはファゴット、そのさらに右にオーボエ

その右となりにクラリネット、そして1番手前にはフルート。

舞台の一番前に女性フルーティストが流麗な姿で鎮座されておりました。


女性演奏者全員を最前に配置するというのは、主催の大澤さんの狙いでしょうか(笑)

(ちなみに楽団主催の大澤さん(Vc)は楽曲の編曲も担当されています)



少し違和感を感じたのはその木管の配置でした。

通常オーケストラなどではフルートとオーボエクラリネットファゴットが隣同士になります。


しかし先ほども書いたとおり、

今回のシュデンゲンさんの配置は、

中央から、ファゴットオーボエクラリネット、フルートという順になっています。

以前、主催の大澤さんがTwitterで、

「ダブルリードの楽器を並べて演奏してみたい」という主旨のことを仰ってて、

それを実践されたんだなぁ、なんてことを思ったりしました。




前置きが長くて全然演奏の話をしてませんでしたね、すいません(笑)




通常であればそれぞれの楽曲について細かく書いていくところなのですが、

公演当日に「ブログの女王」(と勝手に私が思っている人)がいらっしゃってて、

きっとその方が後日ブログで細かい楽曲の解説なんかもされると思いますので、

私は違う視点から今回の公演について書いてみます。

(※他力本願ですいません・・・)




ベートーヴェンなどを聴いていると「動機」の使い方にハッとさせられることがあります。


この場合の「動機」というのは、「フレーズ」とも言えばいいのでしょうか、

メロディの小さな単位のようなもの、と思って頂くとよろしいかと思います。

ベートーヴェンはその動機をこれでもかと言うほどにたくさん使います。

有名な交響曲第五番「運命」の最初のメロディもその一つですね。

この交響曲はこの最初の「運命の動機」を楽曲全体で執拗なまでに使っています。

そうしてこの動機を印象づけることに成功するわけです。



今日の演奏会を聴いていてふとそのことを思い出しました。


大澤さんの編曲は、この「動機」の使い方が絶妙なのですね。

メインテーマや戦闘曲の動機を他の楽曲にもさりげなく加えていたりします。

そうかと思うといろいろな小ネタを仕込んでいたりして、それを探すだけでも楽しかったです。

(小ネタの話はいずれ公式でもされると思いますのでここでは自重しますw)


実はこの公演の前に、大澤さんのYoutubeチャンネルにUPされている、

サガ2のメドレーの演奏を聴いてみました。

「伝説は始まる」から始まり「秘宝を求めて」「安らぎの大地」「新しき神のテーマ」と演奏されています。

このアレンジも大澤さんの手によるものなのでしょうか、

動機の展開に少し共通するものを感じたりしたのですが、違ってたらすいません・・・

今回のアレンジとは少し違いますが、こちらも素晴らしい演奏なので試聴をオススメします。



個人的に後半のサガ2の楽曲は大好きな曲がてんこ盛りだったので嬉しかったですね。

通常戦闘曲である「必殺の一撃」やフィールド曲「秘宝を求めて」、

中ボス曲である「死闘の果てに」やラスボス曲である「Save the world」。

例を挙げるときりが無いのですが、どの曲もアレンジが素晴らしかったです。


特にアポロン戦を想起させる、

「新しき神のテーマ→死闘の果てに→あっ!!」辺りの流れはとても感動しましたし、

「さまよえる魂」の流れるところではオーディンのことを思い出したり、

ラスボスである「最終防衛システム」との戦いのところでは、

曲順が「死闘の果てに→必殺の一撃→Save the world」と原曲に準拠していました。

この辺りで目頭が熱くなりましたね。本当に燃えました。


このラスボス曲「Save the world」の曲中に、

確かクラリネットだったと思うのですが(違ってたらすいません)、いきなり強い不協和音を奏でたんです。

なんだなんだ!?と思ったんですけど、あれラスボスの「ほうだい」の音だったんですよね。

効果音をああいった形で表現されたのは驚きでした。


そしてエンディング曲の演奏中に一人ずつ舞台袖へとはけていき、

最終的に舞台上に誰もいなくなって、舞台裏でエンディング2を終結させるという演出。

舞台が真っ暗になるというのもあいまって素晴らしいなぁ、と思いました。


アンコール曲は「Eat the meat」でした。

これは「帰りに肉を食べましょう」ということだったのですね。

そして案の定、公演後のTwitterでは「肉祭り」が盛大に行われてました(笑)

私も参加したかった・・・






ここで、このブログの最初の文章をもう一度書いてみます。



「ゲームの音楽を聴くってどういうことなんだろう、と考えることがあります」


楽団主催の大澤さんもよくTwitter上でこの話題を語られています。

私もよくこのことを考えるんです。

どうしてゲームの音楽の生演奏を聴きに行くんだろう、と。


その音楽の世界へいざなわれたいのであれば、サントラなどのCDを聴けば良いですし、

それよりもなによりも、まずそのゲームをもう一度プレイすればいいわけですよね。

でも、ゲーム好きな皆様はこうした生演奏に足繁く通われるのです。



自分の中でもまだ答えは出せませんが、候補はいくつかあります。


一つは「変化」。

自分がよく知っているゲームの楽曲が、作曲家自身や名アレンジャーの手によりどのように「変化」するのか。

その変化を楽しみにしているのではないか、ということです。


一つは「懐古」。

古いゲームはその音源が残ってないものが多いので、

生演奏などでその音楽を脳内補完することによって昔のゲームを懐かしむということですね。


一つは「共有」。

そのゲームを知っている人、知らない人を問わず一つの会場に集まって、

同じ音楽を共有しているという感覚を味わうということです。


今日のシュデンゲン室内管弦楽団の演奏は、

まさにこの3つが融合したとても素晴らしい演奏会でした。

サガ、サガ2という二つの素晴らしいゲームに出会った私が、

25年という時を経て再びファンのみんなと同じ音楽を聴いているというのは、

ある意味では不思議な感覚でもあるのですが、

それは、

とても嬉しくて、

とても懐かしくて、

とても面白かったです。


4starでのシュデンゲンさんの演奏会は今のところ行けるかどうかは未定なのですが、

次回の演奏会もとても楽しみにしております。


演奏者の皆様、会場スタッフの皆様、

そして楽曲のアレンジをされた楽団主催の大澤さん、

今日は本当にお疲れ様でした。同じ時間を共有できてとても幸せでした。






追記

演奏会終了後にヴァイオリニストのお二人と少しお話しさせて頂きました。

そのうちのお一人とはTwitterの相互フォロワーさんなのですが、

気さくに話してくれてとても嬉しかったです!!

お二人とも本当にありがとうございました~

また演奏会でお会いできるのを楽しみにしています!