音楽つれづれ日記

音楽好き、飽き性、そして中庸思考。

前田さん

先日、ジャズピアニストであり屈指の編曲家でもあった前田憲男さんが亡くなられました。

 

ずっと昔、20代でまだ駆け出しの編曲家だったころに、

どこかのスタジオだったと思うのですが、お見かけしたことがあったんです。

もしかしたら人違いなのかもしれないんですけど(笑)

 

前田さんといえばジャズ、という印象が強い人も多いと思うんですけど、

私の中でも印象は、テレビ番組のテーマ曲作曲の方が強いんですよね。

特に印象的だったのは「クイズ ヒントでピント」という番組のテーマ曲でした。

シンセサイザーを活用した極めて電子的な音色が特徴的な曲ですが、

あの独特の音色が本当に大好きで、当時耳コピした記憶もあります。

「世界丸ごとHOWマッチ」や「ギミア・ぶれいく」といった、

大橋巨泉さんが司会をされてた番組の曲も手掛けられていましたね。

 

私がジャズ留学をしていた20年以上も前のころ、

前田さんのジャズピアニストとしての軌跡を追いかけ始めました。

テレビの印象が強かったので、その演奏に驚きました。

晩年も演奏活動をされていたようなので、一度生で聞いてみたかったです。

 

そして、編曲というと、

実は前田さん、ゲーム音楽の編曲もされています。

企画ものとして製作された「Gradius in Classic」という、

コナミの名作シューティング「グラディウス」の楽曲を、

フルオーケストラへ編曲したアルバムというのがあったんです。

大島ミチルさんや天野正道さん、

そして、作曲者の東野美紀さんや山根ミチルさんも参加された豪華なアルバムです。

IとIIの2枚発売されて、私も当時購入したんですけど、

そのグラディウスのオーケストラアルバムに前田さんも少し参加されています。

 


Gradius in Classic I - Act I

 

ピアノも音楽理論もほぼ独学で習得されたとのことですが、

このオケアレンジを聞く限りでは、そんなことは微塵も感じません。

編曲家として私がデビューした当時も、引退してしまった今も、

尊敬してやまない編曲家、音楽家のお一人でした。

 

ご冥福をお祈りします。

現代音楽を聞く その46

20世紀初頭に活躍した音楽家、橋本国彦。

教育者としても知られている彼ですが、多くの佳作を残しています。

 

私自身は室内楽志向の人間なので、交響楽よりもピアノ曲の方に魅力を感じます。

そんな彼のピアノ曲集「三枚繪」がお気に入りです。

 


橋本 國彦: 三枚繪(《雨の道》 《踊子の稽古帰り》 《夜曲》) 2. 踊り子の稽古帰り Pf.小林えりか:Kobayashi,Erika

 

全3曲あるうちの第2曲「踊り子の稽古帰り」という曲です。

日本的なフレーズも登場しますが、難易度は少し高めですね。

学生時代に演奏してたこともありますけど、今は弾けないと思います(笑)

CHANGE OF GENERATION

日本のメタルバンドである「アンラッキーモルフェウス」、

通称「あんきも」のニューアルバムです。

 

CHANGE OF GENERATION(チェンジ・オブ・ジェネレーション)

CHANGE OF GENERATION(チェンジ・オブ・ジェネレーション)

 

 

先日最新アルバムがリリースされたので即買いしました。

元々は東方Projectという、言葉で説明するのは難しいんですけど、

シューティングゲームやCDなどの著作物のメタルアレンジから彼らの音楽は始まっています。

 

まあ、私自身は東方Projectにそれほど詳しいわけではないんですが、

楽曲としては継続してずっと聞き続けています。

 

もともと彼らの音楽を知ったのは、

私の定例発掘作業、ではなく、サブカルに詳しい友人からの紹介でした。

その友人に貸してもらった1stオリジナルアルバム「affected」は、

私の心をとらえて離さない、すごいメロディックメタルでした。

ヘヴィメタル、ハードロックも大好きな私としては、

このバンドは追いかけねばならぬ、と思って、

まだ一度も彼らの生演奏には立ち会えていないんですけど(笑)

 


Unlucky Morpheus 2nd full album『CHANGE OF GENERATION』official trailer

 

ラインナップを見るとベストアルバム的な印象も多少ありますけど、

ロディアスなバラードや技巧を凝らした作品も堪能できる、

ファンならずとも一聴の価値あるアルバムになっていると思います。

 

最近よく聞いているアルバムの一つとなっています。

Incidental Music Vol.40

私自身はディズニーランドやディズニーシーには久しく行ってないんです。

が、使われている音楽はチェックしていたりします。

 

ディズニーシーのアトラクションの一つ、

「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」。

このアトラクションの中で使われているBGMが、

「コンパス・オブ・ユア・ハート」という歌なんですね。

 


シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ ライドスルー

 

この曲、作曲しているのは、

美女と野獣やアラジンなどのディズニー映画で、

作曲を手掛けているアラン・メンケンその人です。

 

この壮大な歌を聞いていると、冒険に出たくなりませんか?

私は冒険、というほどではないですが、旅に出たくなります。

海は怖いので、平野を旅するほうがいいですけど(笑)

洗足ゲーム音楽ブラスに寄せて

このブログは、
本日、2018年11月24日(土)に行われた、
「洗足ゲーム音楽ブラス」の第2回演奏会の感想ブログです。

なんですけど。
ちょっと違うお話からさせてください。

今回のこの演奏会で、
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド(以下、BotW)の演奏が行われました。
私自身はすでにこの洗足ゲーム音楽ブラスの演奏会より2日前に、
公式のゼルダの伝説コンサートに参加いたしましたので、
比較という意味でもこの演奏会には参加したいと思っていました。

私はゼルダの伝説シリーズが大好きです。
BotWも発売から4日後には最初のエンディングを見て、
そこから今に至るもまだプレイし続けているという稀有なタイトルとなっています。
年齢のせいか、最近涙腺が緩みっぱなしということもあって、
このBotWでも涙腺を大きく刺激されっぱなしでありました。
DLCダウンロードコンテンツ)として配信された「英傑たちの詩(バラッド)」は、
ほぼ泣きながらプレイしていたくらいです(笑)

なので、今回の演奏会の目的もBotWでした。
もちろん他のタイトルもプレイ済みのものはありますし、
そちらを楽しみにしてる人も大変多かっただろうとは思うのですが、
前述のとおり、私の中ではまずBotWありきだったんです。

そんな、少し不純な動機ではありましたが、
今回の演奏会の最後に20分もの大メドレーを聞けたのは本当に嬉しかったです。
耳コピで個々まで音色を再現された、アレンジされたのは驚きでしたし、
ブラス、つまりは吹奏楽での演奏ということで、
弦楽が入ってないことも少し不安材料ではあったのですが、杞憂でした。



洗足ゲーム音楽ブラス 2nd Concert
2018年11月24日(土)
開場:13:00 開演:13:30
横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール

プログラム

クロノトリガー
ボケットモンスターブラックホワイト・ブラックホワイト2
MOTHER2
UNDERTALE

~休憩~

スーパーマリオオデッセイ
洞窟物語(小編成)
カービィのエアライド
ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド

アンコール
モンスターハンターワールドより「星に駆られて」
(メインテーマソング)


最初は前方ブロックで聞いてみました。
ブラスでのえんそうということもあり、
中ホール規模の今回のホールでは後方から聞くのが理想ではあったのですが、
前半は奏者の表情や演奏に注目してみようと決めていました。

1曲目の「クロノトリガー」では、
「予感」のピアノをバックに曲が展開していき、
気がつくと「ガルディア王国千年祭」の賑やかな曲へ変わってました。
団員が一斉に「はっ!」と掛け声を上げるのもニヤニヤして聞いてましたし、
「カエルのテーマ」の荘厳な音色に奮い立ったりしていましたが、
やっぱり前方過ぎて音がキンキンしてしまってました。
私の耳の問題も若干あるので、仕方ないところではありましたが。

2曲目の「ポケモンBW、BW2」ですが、
私自身ポケモンはほとんどプレイしていないので感想書きにくいところですが、
近くにいた女の子5~6人組の人たちが異常なほど興奮していて(笑)、
1曲目では消極的だった曲前の拍手も、
ポケモンをやる前には手が痛くなりそうなほど盛大に叩いてました。
隣の女の子と手をつないで曲に合わせて振ったり、
小声、あるいはささやくような小さな声で隣に話しかけたりしなければ、
そっちに注意を向けずに済んだのに、と軽く思ったりしながら聞いていました。
(後半は後方に席を移動したので事なきを得ましたけど)

唯一知ってたのが「タイトル曲」だったのでそこはちょっと嬉しかったです。

3曲目の「MOTHER2」ですが、
オネットのテーマが前作のフィールド曲「Pollyanna」のイントロから始まる仕様もあってか、ちょっと嬉しかったですね。
サターンバレーの曲の再現度の高さも驚きましたし、
スノーマンも鈴の音が印象的でしたが、
近くのお客さんが開演前に「スノーマン、ジェフの故郷じゃない」と、
はっきりとした声で隣の人に自慢気に話されていたのできっと違うんでしょうね(笑)
(パンフレットに「ジェフの故郷」って書いてあったので・・・)

前半最後の「UNDERTALE」。
前述の女の子グループもMOTHER2では無反応でしたが、
このUNDERTALEはポケモン並、いやそれ以上に興奮してるようで何よりでした。
別の演奏団体さんの公演で完成度の高いUNDERTALE楽曲を聞いてたこともあり、
それほど期待せずに聞き始めたのですが、すいません、謝ります。
大変このゲームへの愛情を感じる演奏でした。
泣く泣くメドレーから削除した曲も多かったと思いますが、
ボス曲を中心に、ツボをおさえた選曲で嬉しくなりました。
ASGOREのあとでFallen Down(Reprise)を入れてるのもニヤニヤしましたし、
曲の最後をタイトル(ドーン!という音)でしめるというのも画期的だったと思います。
あまり途切れること無くメドレー形式で一気に駆け抜ける構成も良かったです。
パンフレットでは「賛否分かれるアレンジ」と編曲者の方も書いてましたが、
どんなに原曲に近いアレンジをしたところで賛否は必ずありますから全く気にすることはないと思います。


そして15分間の休憩です。
やはり響きが少し気になってしまったので席を移動することにしました。
幸いなこと、と書いてしまうと奏者の皆さんに失礼ですけど、
600近い客席の真ん中のブロックはほとんど埋まってましたが、
1階前方の左右には割と空席がありましし、一階席後方も少し空いてました。
もう少しお客さんを呼べるクオリティはあると思うんですけど、
やっぱり宣伝不足という理由もあるのかもしれませんね。


後半1曲目は「スーパーマリオオデッセイ」。
発売前に配信された歌がビッグバンド風の楽曲になっているので、
今回の洗足ゲーム音楽ブラスにはぴったりだな、と感じました。
「ダイナフォー」が本当に大好きな曲で、
サントラでもこの曲をよく聞いてたから、この選曲は嬉しかったですね。
原曲はフルオケでの演奏ですが、ブラスでもその魅力は健在です。
全体的に金管が大活躍(という名の酷使)だったので、
トランペットセクションの人たちを始め、大変だったろうなと(笑)
バンド演奏からの「ニュードンクシティ」のつなぎが完璧でした。
(たぶんこのつなぎ部分だったと思うんですけど、違ってたらごめんなさい)

普通メドレーで曲と曲を繋ぐ場合って、
ロングトーン(楽器の長い音)を使うことが多いんですが、
このマリオデのここのつなぎは展開も素晴らしく、そこはほんとに興奮しました。
アレンジされた方のセンスを存分に感じることができて嬉しかったです。


2曲目は「洞窟物語」です。
総勢50名近くいたメンバーの大半が退場し小編成での演奏となりました。
木管金管セクションで13名、打楽器で3名の計16人でしたね。

私もその昔プレイしていたんですけど、クリアしたかどうかおぼえてません(笑)
音楽も特徴的でレトロ感満載の良いゲームだった記憶は残ってます。
今回の演奏構成も人気曲を中心としたものになっていて、
メインテーマである「大農園」や「わんぱくロボ」など、
その軽快な音色は小編成にぴったりな印象を受けました。
最後に演奏されたランニング・ヘルは、若干トラウマですけど・・・

3曲目は「カービィのエアライド」です。
レースゲームということもあり、かなり忙しい曲多めでしたね。
このゲーム、プレイしたかしてないか未だに記憶が定かではないんですけど(笑)
サンドーラのBGMは大好きです。今回の演奏には入ってなかったですが・・・

演奏の最後に「グリーングリーンズ」のアレンジが入ってたのは嬉しかったですね。
どうやら編曲者の癖のようなもので、
「そのゲームのフレーズを最後に持ってくる」ってのがあったのだそうです。
(MCをされていた編曲者御本人談)


最後の演奏は「ブレスオブザワイルド」です。

まずはピアノ演奏、本当にお疲れ様でした。
このゲーム自体がピアノを主軸とした曲が多く、
特に魔獣ガノン戦での荒ぶるピアノは見てて大変そうだなと思っておりました。
あと、メインテーマの流麗なピアノに顔がほころんでいました。

たぶん編曲者の方はリーバルがお好きだったとお見受けします。
ダルケルもウルボザも短めのアレンジだったのに対して、
リーバルはDLC版の荘厳なバージョンをアレンジされてましたから。
いや、とても良かったんですけど!泣いたんですけど!(笑)

鳥人間チャレンジの音楽が入っていたのは嬉しかったですね。
あの曲、本当に大好きでして。ホンモノ聞いてるようでした。

全部の曲について書きたいんですが、それはやめときます。
ぜひとも次回はDLC編をお願いします。


そしてアンコールはモンスターハンターワールドからメインテーマですね。
モンハンワールドは一応プレイ済みクリア済みではあるのですが、
今回の選曲の流れから、まさかのモンハンは嬉しかったです。
しかもメインテーマである「星に駆られて」。そりゃ涙腺に来ます。


感想垂れ流しただけの内容のないブログになってしまいましたが、
演奏スキルはとてつもないものがありました。
金管の安定感(全部)、打楽器の安定感(特にティンパニ、ドラムス)、
そして木管の超安定感(全部)が素晴らしかったです。

東京藝大の文化祭でもゲーム音楽が取り上げられていて、
洗足学園でもこうしてゲーム音楽を奏でる機会が増えてきたというのは、
聞く側からしてもとても嬉しい事象ではないかと思います。
プロの卵、というと少し語弊があるかもしれませんけど、
演奏スキルが高く、ゲームへの愛を存分に感じられる演奏会は、
きっと需要はこれからもあるだろう、と思います。

アンコール含め9曲中7曲の編曲をされたMCの三原さん、
そして2曲の編曲を見事やってのけたオーボエの小川さん。
そして代表の青山さん。素晴らしい指揮をされた竹内さん。
さらには奏者の皆様、会場スタッフの皆様。
とても素晴らしい演奏会をありがとうございました。

ぜひまたお願いします!!!

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Claude Williamson Trio / Autumn In New York【ジャズのススメ 86】

祝日ということでブログ更新を忘れてました。

すでに日付変わってしまいましたが(笑)

 

Autumn In New York

Autumn In New York

 

 

ビバップと呼ばれるモダンジャズの様式を確立したのは、

セロニアス・モンクバド・パウエルあたりというのが一般的です。

特にバド・パウエルは後に「パウエル派閥」なるものができるほど影響力があって、

このクロード・ウィリアムソンもそんな一派の一人と言われています。

黒人であったバドとの対比で「白いパウエル」と揶揄されることも。

 

まあそんな理屈なんてどうでも良くて(笑)

「ニューヨークの秋」と題されたこのアルバム、

レコーディングエンジニアとして参加してたのが、

伝説のエンジニアとも言われるルディ・ヴァン・ゲルダーという人です。

当時としてはかなりの音質で録音されてるんですよね。

 


Manhattan - Claude Williamson Trio

Piano & Trumpet Concert

最初に出会ったときの名前は「RIORU」さんでした。
気がつけば本名である「SAKI」さんで活動されていました。
どういう心境の変化があったのか、定かではありませんが、
そのSAKIさんから直々のお声がけもあり、
SAKIさんの参加されてる演奏会で「準レギュラー」となっている私としては、
というよりも、ベートーヴェンも近現代も大好きな私としては、
この魅力的なプログラムに惹かれないはずもなかったという次第で(笑)


林真由&林沙希 ピアノ&トランペットコンサート
2018年11月23日(金・祝)
開場12:45 開演13:00
Piano:林真由
Trumpet:林沙希
Piano(Guest):泉翔子
(以上、敬称略)

-Program-

Ewazen/トランペットソナタ
Gershwin/Someone to Watch Over Me
Dvorak/ユモレスク
Sibelius/樅の木
Debussy/月の光

休憩

Beethoven/Piano Sonata No.13 E-flat Major Op.27-1
Beethoven/Piano Sonata No.14 C-sharp Minor Op.27-2
Ravel/Kaddish (No.1) From "2 Mélodies hébraïques"
Debussy/亜麻色の髪の乙女
PIAFS/愛の讃歌
Kosma/枯葉

アンコールあり


今回ゲストで参加された泉さん、以前から存じ上げているピアニストさんです。
私の中では漢字の「泉」さんというより、
平仮名の「いずみ」さんという方が馴染み深いのでこちらで通させていただきますね。
すいません。
いずみさんのピアノ、好きなんですよ。
前々回書いた「幻想水滸伝II」のときにもシンセ奏者として参加されてたりして、
私の中では「ゲーム音楽の鍵盤奏者」という印象が強かったんですね。
RIORUさんと名乗られてた頃にSAKIさんと出会ったきっかけも、
実はいずみさんの参加された秋葉原のライブハウスでのことでした。
ピアノ・デュオで演奏されたゲーム音楽に感動したのがいつのことか忘れましたが、
そのライブの帰り際に某場所で出会ったのが、
SAKIさんとの最初の出会いだったと記憶しております。

いずみさんの力強い打鍵と、
SAKIさんの丁寧なトランペットの音色がどういう化学反応を及ぼすのか。
最初の演奏曲目であるエワイゼンのトランペットソナタで、
私は度肝を抜かれることになりました。


1.エリック・エワイゼン「トランペットソナタ

 I. Lento - Allegro moderato
II. Allegretto
III. Allegro con fuoco

アメリカの現代作曲家エワイゼンの作による、

3楽章構成のピアノとトランペットのための楽曲です。
幻想的というよりも、映像的な印象のある彼の曲ですが、
難易度は高い、という印象を私自身は持っています。
なので、決まったときは最高に気持のいい楽曲とも言えるわけですが、
プログラムの最初にこれを持ってきたのが、なかなかにSAKIさんらしいというか(笑)
 
短い序奏から始まり、快活に進んでいく第一楽章。
メランコリックな雰囲気が続く、私も大好きな第二楽章。
そして速度指示で「炎のように熱烈に」と書かれた第三楽章。
20分強の難曲が、あっという間に終わってしまった感覚がありました。
この曲、音のバランスが難しいんですよね。
トランペットの音の圧に、ピアノの音色がかき消されることもあります。
が、いずみさんの力強い打鍵とテクニックもあいまって、
とてもバランスの良い音色を響かせてたように私は思いました。
私が大好きな楽曲であるという贔屓目もあるかもですけど(笑)
 
ちなみに、私はエウェイゼン、エワイゼンと発音することが多いんですが、
公式ではエワーゼンとかエワゼンと表記されてるみたいですね。
ブログでは「エワイゼン」と書かせていただきました。
 
 
ここで、いずみさんは一度舞台から退場されて、
SAKIさんの実姉でもある真由さんが登場されました。
二人で演奏されたのが、ガーシュインの名曲です。
 
 
2.ジョージ・ガーシュイン「Someone to Watch Over Me」
 
言い忘れていましたが、今回の演奏会場である南小岩バッハザールは、
約60人程度の小さなホールです。
客席と舞台がかなり近いので、奏者の表情までしっかりと感じることができます。
 
真由さんとは今回はじめてお会いしたんですが、
SAKIさんと似てる印象ですが、もっとほんわかした感じを受けました。
しかし、いざピアノの前に座るとその表情は一変します。
 
ガーシュインが自身のミュージカルのために書いたバラードですね。
ですが、単独でもスタンダードナンバーとして知られた名曲でもあります。
そんな曲をピアノとトランペット用にアレンジされてます。
バラードということで、フリューゲルホルンに持ち替えての演奏でしたが、
ジャズだとフリューゲルホルン、とっても合いますよね。
あの暖かい音色でそうされると、心地よい気持ちになります。
 
私はホール左側よりにいたので、ピアノの演奏がよく見えてたのですが、
真由さんのピアノがとても良かったんです。
いや、SAKIさんの演奏ももちろんすばらしかったんですけど・・・
トランペットに合わせて柔らかな音色で奏されるピアノが下支えになっていて、
それがとても気持ちよく耳に届いてくる、といった感じがしました。
 
 
ここでSAKIさんは舞台外へ。
真由さんのピアノリサイタルが始まります。
 
 
3.ドヴォルザーク「ユモレスク」
 
メロディがとても有名な曲ですね。
オーケストラでも、チェロでの演奏でもよく知られていますが、
ピアノ独奏版はたぶん今回はじめて聞かせていただいたように思います。
(学生時代に聞いたかもしれませんけど・・・)
 
この曲、中間部の切ないメロディが本当に大好きでして。
曲名どおりにユーモラスな印象のある主題に目が行ってしまいがちですが、
この曲の肝は、あの力強くも切ない中間部にこそあると私は思っています。
以前、指揮者の小林研一郎さんの演奏会で、
アンコールとして披露された「ユモレスク」を聞いたときに、
小林さんがそのような意図をおっしゃってたのをおぼえています。
 
ユーモアの中に隠された切ない気持ち、思いのようなものを感じ、
真由さんの情感あふれる演奏もあって、この曲を聞いてて胸が熱くなっていました。
 
 
4.シベリウス「樅の木」
 
「もみのき」です。
シベリウスの「5つの小品」の中の1曲ですね。
けだるいジャズのような音色にも聞こえますが、その音色はどこか寂しげです。
この曲、私も大好きな1曲でして、
「5つの小品」の中でもとりわけ有名なものとなってますね。
即興的な表現を問われる印象のあるこの曲ですが、
真由さんの演奏は、どちらかというと淡泊なものに感じられました。
必要以上に感情移入をしないで、俯瞰的に演奏されてるようにお見受けしました。
その演奏が、逆にこの曲のはかないイメージを倍加させてたように思います。
 
 
5.ドビュッシー「月の光」
 
ドビュッシーのピアノ独奏曲集「ベルガマスク組曲」の第3曲。
という説明も不要なほどに、よく知られた曲ですね。
フランス音楽もとても大好きなので、この選曲もとても嬉しかったです。
個人的には組曲全4曲聞いてみたかったです。
特に「前奏曲」と「パスピエ」は真由さんの演奏でぜひ聞いてみたいと思いました。
 
「月の光」。淡く輝く月光を感じさせる、少しはかなげなメロディは、
親しみやすさを感じると同時に、少し不可思議な印象も同時に与えます。
どこに進んでいるのかわからない迷子のような、とでもいうのか、
聞き手に「さすらい」を感じさせるような、そんな印象が昔からあります。
独特の響きをもつドビュッシーの曲の中でも、とりわけ有名であるがゆえに、
どういうアプローチで演奏されるのか楽しみだった1曲でしたが、
静寂をも利用してとても聴きごたえのある演奏となっていたように思いました。
 
 
そして、時刻を見ると13時40分でした。
「14時15分まで休憩となります」というアナウンスを聞いて、
え、そんな長く休憩なの!?と思ったのは私だけではなかったはずです(笑)
 
 
そして休憩が終わり登場したのは、
艶やかな赤いドレスから、シックな緑のドレスに着替えた真由さんでした。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタをこれから2曲連続で演奏します。
 
 
 
ベートーヴェンは私の尊敬する作曲家の一人です。
最初にクラシックに触れたのが彼の交響曲第3番と6番でした。
それ以来所持してるCDの多くは彼の作品になってます。
そのくらい思い入れのある作曲家の作品であることもあり、
軽々に演奏の感想を書いていいものかどうか悩みます。
 
真由さんが演奏前に軽くMCをされてたのですが、
長い休憩の謝罪で一笑いあったあとで、
この2曲に取り組む覚悟のようなものが表情に垣間見えました。
「長い休憩と同じくらい長い演奏ですけれども」と謙遜めいたことを言われていましたが、その演奏は本当に圧巻の一言でした。
 
二曲ともに「幻想曲風ソナタ」と題され、
私も繰り返し何度も聞いたことのある曲ではあるのですが、
生でその演奏を見るとまたひと味もふた味も違った印象を受けます。
13番の一楽章、8ぶんの6拍子のAllegroに変わる瞬間の音色の変化は、
鳥肌が立つ感覚を久々に味わうことができました。
その感覚は14番のあの有名な出だしでも、3楽章のあの爆発的な曲調の中でも、
たしかに感じることができました。涙が出そうになるくらいに。
 
久々に生でベートーヴェンピアノソナタを聞けて本当に幸せでした。
 
 
ここで14番の最終楽章演奏中に真由さんに異変が。
しきりに目を気にする素振りを見せていたのです。
演奏中に感極まって涙が出たのか、と誰しもが思ったのですが、
演奏直後に真由さんが、
「汗が目に入って、右目をこうして避けてたんですけど今度は左目が・・・」
と言われて会場内はどっとわきました(笑)
 
このあと真由さんは一旦退場されて、
エワイゼンのトランペットソナタを演奏されたお二人が再び登壇。
SAKIさんも「泣いてるのかと思った」と言って笑いを誘っていました。
 
 
8.ラヴェル「カディッシュ」(2つのヘブライの歌より第1曲)
 
もともとは歌曲として作られた楽曲ですが、
作曲者自らが管弦楽へ編曲したものもあります。
が、今回はピアノとトランペット独奏用にアレンジされたものですね。
ヘブライ」という言葉どおり、少しエスニックなメロディが登場しますが、
静謐な雰囲気を保ったまま曲が進行していきます。
 
「カディッシュ」とはユダヤ教の祈りの歌を意味するのですが、
私がこの言葉を聞いて最初に思ったのは、
レナード・バーンスタイン交響曲第3番「カディッシュ」でした(笑)
いや、もちろんラヴェルのこの曲も知っていましたし、
フランス音楽好きな私としては大好物の曲の一つでもあったので嬉しかったですよ。
 
ピアノとトランペットという少し特殊な組み合わせの演奏で、
少し脳内が混乱をきたしたような気もしますけど、
それでも楽曲の持つ異質なものとあいまって、とてもいい演奏でした。
 
 
 
ドビュッシー前奏曲集第1巻全12曲の第8曲です。
以前、フランスのピアニストが来日したときに、
この前奏曲集を生で聞いたことがあるんですけど、ほんといい曲ですよね。
第10曲の「沈める寺」という曲が大好きで、いつも・・・
 
あ、「亜麻色の髪の乙女」のお話でしたね。
 
ドビュッシーの曲としては珍しく一貫した変ト長調の曲です。
優しいメロディと和音が特徴的な名曲ではありますが、
これをトランペットもくわえて演奏するというのがまたSAKIさんらしいというか。
メロディがピアノとトランペット交互に奏でられ、
その世界は徐々に広がっていく印象を持ちました。
こういう演奏もアリなんだな、と思わせてくれたのはすごいなぁと。
 
ピアノ独奏のあの包み込まれるような音色をトランペットで表現するのは、
とても難しいことである、とも思いましたが、弾ききっていましたね。
いずみさんのピアノも原曲を思わせる優美なものでとても良かったです。
 
 
 
シャンソン歌手として知られるエディット・ピアフ
その歌唱曲の中でもとりわけ有名なのがこの「愛の讃歌」です。
「ばら色の人生」も実は大好きな曲の一つですけど、それは関係ないですね(笑)
余談ですけど、この曲の作詞はエディット・ピアフ本人、
そして作曲はマルグリット・モノー
当時作編曲家として活躍していた女性作曲家ですね。
 
ピアノは真由さん、トランペットはSAKIさん。
そして鍵盤ハーモニカ(メロディオン)を手にしたいずみさん。
いずみさんがメロディオンを手にした瞬間に、
私なんかはいずみさんのSNSのアイコンを想起してしまいそうになりますが。
 
この三重奏が素晴らしかったんです!!
 
ピアノとトランペットという取り合わせをずっと聞いてきたので、
鍵盤ハーモニカの音色がとても新鮮に聞こえてきます。
裏メロを演奏したり、メロディを奏でたりと縦横無尽に活躍するその音色に、
いつの間にか私の顔に笑いがこみ上げてきました。嬉しくなったんですね、きっと。
 
 
11.ジョセフ・コズマ「枯葉」
 
ジャズ好きな私からすると、ビル・エヴァンスの演奏を想起してしまいますが、
もともと原曲はシャンソンですね。
ジョセフ・コズマが作った曲に、
当時作家として知られるジャック・プレヴェールが詩をつけたものです。
そんな豆知識はどうでもいいとは思うんですけど(笑)
 
コンサートの最後をジャズでしめる、というのは面白かったですね。
トランペットとピアノによるジャズ、それだけを見ると定番の組み合わせではあるんですけど、クラシック畑のお二人のジャズというのはまた新鮮でした。
ジャズ調の和音が響くたびに、私の心に音符が一つ飛び込んでくる感覚が味わえて、
とても幸せなフィナーレとなりました。
 
 
そして、アンコールです。
 
12.ショパン「12の練習曲 第12番 ハ短調
13.ショパン「12の練習曲 第3番 ホ長調
 
まずは真由さんの独奏2曲。
第12番。「革命のエチュード」と言われる有名な1曲。
そして第3番。「別れの曲」と言われるこちらも名曲です。
 
私自身、ショパンにはいい思い出があまりないんですよね。
ですが、真由さんの叙情的なショパンの演奏は素直に心にしみました。
よく知られた楽曲ではありますが、生の迫力は素晴らしかったですね。
 
 
14.葉加瀬太郎情熱大陸」(ピアノとトランペット編曲版)
 
ガチのクラシックによるプログラムで、
アンコール最後にこの曲を選ぶ、というのもらしいといえばらしいです(笑)
 
ピアフやコズマも厳密にはクラシックではないんでしょうけども、
やはりこの選曲センスは面白かったですね。
トランペットのメロディを、ラテンのリズムを奏でるピアノが支える形で、
客席の手拍子もあって、楽しいアンコールとなりました。
 
 
少し駆け足となってしまいましたが、
今回の演奏会の感想は以上となります。
 
真由さんと沙希さんのデュオ、
沙希さんといずみさんのデュオ、
真由さんの独奏、
そして3人でのトリオ演奏、
どれも大変素晴らしく、涙がこぼれそうになる瞬間もありました。
 
あまりお目にかかれない取り合わせの演奏会だったので、
とても貴重で、でも堅苦しくないものだったのが嬉しかったです。
 
 
演奏者3人の皆さん。会場スタッフの皆さん。
そして、演奏会の帰りに駅までご一緒してお話してくれた男性の方。
ありがとうございました。とても楽しかったです。
 

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