ここ最近アレンジ仕事がちょこちょこ入ってて、
なかなか趣味の時間を保てない状況なのですが、
このブログに文章を書くことは定期的にやってます。
ま、そんなわたくしごとはさておき。
昔の話をちょこっとします。
当時師事していた音大の教授というか講師というか、
私が教えを乞うていた先生からよく言われていたことは、
「きちんと楽譜を読んで書きなさい」ということでした。
その先生曰く、
楽譜を見るとその人の音楽性はもとより、
音楽をきっちりと勉強したかしていないかが一目でわかる、のだそうです。
確かに、市販されている楽譜などをちょくちょく見てみると、
おぼろげながらもそうしたことはわかるような気がします。
既成曲をアレンジして演奏するケースが多いんですけど、
そうしたアレンジなども、
ああ、この人楽器の特性とか理解してないんだろうなぁ、と思うことも、
実は結構あったりするんですよね。上から目線で申し訳ないですけど。
演奏スキルがいくら高くても、そうしたところが散見されると、
一気に聞く気力が低下してしまうのは仕方ないことなのかもしれません。
もちろん、独学で音楽理論を勉強して音楽の専門的教育を受けていない人でも、
天才的なアレンジをされる方もいますし、
音楽の専門教育をきっちり受けているはずなのに、
才能が開花しなかったのか、あまりパッとしないこともあります。
アレンジには理論だけではなくセンスも問われるので、
私自身のセンスとたまたま合致しなかっただけ、ということもあります。
そこはもう個人の好悪だと思うのでいかんともしがたいですけども。
作曲家からデモテープなどをいただいてアレンジを行う場合、
「もうこのままでいいんじゃないの?」ってくらい、
がちがちにアレンジを加えてくる作曲家さんもいらっしゃいますし、
ピアノやギター一本で朗々と歌い上げたり、
簡単な打ち込みをしてメロディをピアノで演奏してくる方もいらっしゃいます。
楽譜もあったりなかったりということが多かったですね。
そういう時はメロディ譜をざっくりと手書きしてからの作業になります。
その時に和音を付けたりすることもあるんですけど、
基本的にはざっくりとメロディを眺めてからその方向性を決めていきます。
作曲者からの要望も種々あるんですが、最初は無視します(笑)。
ざっとスコアを見たり一通りデモテープを聞いたときの第一印象、
インスピレーションとでもいうんでしょうけど、そうしたものを大事にして、
方向性を決めたうえで、こまごまとした作業を始めます。
早い時には数時間で、遅くとも期日前までには必ず仕上げます。
納期を遅らせる方も多くいらっしゃいますけど(笑)。
プロを自認する限りは、与えられた条件で最良のものを提供すること。
それこそが必要不可欠な技術であり信頼される骨子ともなります。
作曲する時点で遅れることも結構あったりするので、
アレンジャーが割を食うこともしばしばあったりしますけどね・・・
プロデューサーや作曲者も交えてのディスカッションもあります。
無い時もありますし、丸投げされることもありましたね。
私はすでにこの業界から足を洗っている身なので、
今の状況はあまりよくはわかりませんけど、
思ったほど先進的ではなかったです。旧態依然としたものでした。
流行の先端をいっているのは上っ面だけで、実は古い慣習みたいなものが、
ドロドロとした状態で存在していたように思います。
いまはしりませんけどね(二度目)。
そりゃもう、だめだしなんて数えだしたらきりがないくらいありましたし、
私の方からダメ出しをしたことももちろんあります。
編曲は信頼されることも商売の一つなので、そこは譲れないってこともありますけど。
よくよく考えたら流行曲だったり演歌だったり、
いろんな曲をギャラをもらって最初に聞いてたんだなと思うと、
実はものすごく貴重な経験だったんじゃないかな、と。
その作曲家渾身の力作を最初に手にすることができるアレンジャー。
業界にいた当時は、こんな業界二度と来るか、って思ったもんですけど、
思い返してみるといい思い出も実はたくさんあったりして、
ちょっと寂しさと後悔が入り混じった感情がこみ上げてきます。
まあ、今でもちょこちょこアレンジの仕事はしてますけどね(笑)。
印税とは無縁の職業だった編曲というお仕事。
(作詞や作曲、歌唱とは違って編曲報酬は印税ではなくギャラでした)
きついこともたくさんあって、それが原因でやめたんですけど、
もうちょっとあの業界でくすぶっていてもよかったかも知れないですね。
たぶん胃に穴が開き続けて入院する羽目になってたでしょう(笑)。