Mr.S、とその人は呼ばれていました。
昨年93歳を迎えられ、毎年のように日本へ来られて、
とても老齢とは思えぬ機敏な動きでオーケストラを指揮されていました。
私は彼の指揮で二回ほどブルックナーを聞かせて頂きました。
もともとそれほど聴き込んでいるわけでもなく、
あまり好みではなかった作曲家の一人ではあったのですが、
彼が指揮するブルックナーはとても明快で、
余計なものを一切混ぜていない純粋な音色を聴かせてくれました。
もちろんこれは私個人が感じた感想なので、
他の人がどういう感想を持っているのかは分かりません。
前にもこのブログで書いたかもしれませんけど、
クラシック好きを自称する方の多くは濁ったフィルターを持っていて、
頑固で意見を曲げようとしないクソジジイが多い印象なので、
Mr.Sの演奏を快しとしない人もきっといらっしゃるはずです。
まあ、そういう人に向けてこのブログを書いてないので、
そんな連中のことなど知ったこっちゃないんですけど(笑)。
この人の指揮でもっとブルックナーを聴いてみたい。
そう思っていた矢先、Mr.Sの訃報を知ったのです。
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ。Mr.Sと呼ばれた孤高の指揮者。
私は彼の演奏をもっと聞いていたいと思いました。
だから訃報に接して残念に思ったのと同時に少し安心した自分もいたんです。
「ああ、これで安らかに過ごすことが出来ますね」と。
でも、もう少しだけ彼の音色を聞いてみたかったなあ。
やっぱりさびしいです。