彼との思い出を書こうと思った。
書きたいことがたくさんあるのに、
こうして書こうとすると何も出てこない。
彼は音楽を奏でる人だった。
最初にその音楽と出会ったのはもう20年以上も前のことになる。
その音楽に魅了された私は、
そこからそのアーティストを追いかけるようになった。
ZABADAKというそのアーティストの名前を、
私はアルバムの表紙で知ることになった。
のれん分け、と呼ばれる上野洋子の脱退をきっかけに、
私はそこから少し離れることになった。
吉良知彦のソロ時代、そして小峰公子の正式な加入というのも、
一応ニュースとして記憶はしていたけれど、昔ほど彼らの音楽を聞くことはなかった。
きっかけはなんだったんだろう。
今から二年三ヶ月前のことだ。
吉良知彦がギター片手に演奏をするというのを人づてに聞いた。
聞きに行こう、と思ったのが天啓だったのか、今でもそれはわからない。
十人ほどの観客の前で懸命にギターを演奏するその姿に感動を覚えた。
昔憧れていたアーティストが私の目の前にいる。
ただそれだけで震えていた。
帰りがけに一言だけ声をかけ、笑顔で感謝の言葉を返してくれた。
それからすぐにそのことをこのブログで書いた。
そのことをTwitterで告知すると、なんと吉良知彦本人がフォローをしてくれた。
私はフォローを返すことになった。憧れの人と相互フォロワーとなったのだ。
ある時、Twitterのとあるフォロワーが「曲を教えてほしい」とツイートした。
その曲が何なのかわからないのだという。
私はその疑問に乗ることにした。
ヒントはあまりにも少ない。そのヒントを頼りに私はとある曲のメロディを思い浮かべることになる。
そしてそのメロディを階名表記でツイートしてみたのだ。
すると、吉良知彦がリプをくれた。
そしてその階名表記のメロディをギターで演奏してみせたのだ。
疑問のことなど完全に忘れ、
吉良知彦が私の書いたメロディをギターで演奏してくれたそのことに驚き、喜んだ。
憧れの人が近く感じられた。
私が最後に彼の生演奏を聞いたのは光田康典ライブの最終公演だった。
私はタブーを犯し、そのライブを二回見に行ってしまった。
今でもそのことを少し後悔しているのだが、その両方共私は号泣した。
彼らの奏でる音楽に魅了され、感動したのだ。
ああ、こんな演奏、また聞けたら良いのに。ライブ直後に思ったものだ。
しかし、彼は逝ってしまった。
そのことがとてつもなく悲しい。
以上、敬称略で書かせていただきました。
思いの丈をどういうふうに伝えるべきか、散々迷いました。
迷いに迷って、こういう形式をとったのは、
私の手の赴くままにまっすぐ書いてみようと思ったからです。
敬称略というのが失礼に当たる、ということは百も承知なのですが、
それでも、この想いをどこかでぶつけておかないと、きっと私が後悔すると思ったんです。
拙文失礼しました。
少しだけ解説をさせてください。
前述の、Twitterで私が書いた階名、メロディは、
後に、グリーグのペール・ギュント第二組曲「ソルヴェイグの歌」であることがわかりました。
が、吉良さんも私も、その曲名をど忘れしていました。
私の別のフォロワーさんが教えてくれたんです。あのときはありがとうございました。
そして、その疑問を投げかけた張本人から後に答えが提示されたのですが、
ドヴォルザークのとある曲だったようです・・・
吉良知彦さん、長旅お疲れ様でした。
そちらでゆっくりお休みください。
たくさんの感動を、本当にありがとうございました。