この楽譜は、楽聖ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15、
その第一楽章の提示部の終結部近くのものです。
一番上の2段はピアノ、その下の4段は弦楽の楽譜、
5段目からはすべての楽器の全合奏部で、
上からフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニと続きます。そこから下はピアノが2段、弦楽が4段となっています。
で、楽譜の右上に赤い丸をしているんですが、
ちょっと見づらいと思うので拡大してみます。
trと書かれているのは「トリル」と読みます。
その音と、二度上の音程の音を交互に素早く行き来するように奏します。
それだけなら片手で二つの音を震えるように演奏するだけなのですが、
赤丸部分に小さな音符が付いています。
これはトリルの終結をこのように奏しましょうというものです。
「後打音」とも呼ばれますが、専門用語はどうでもいいです(笑)
こういう「飾り付けの音」というのは奏者によって解釈が様々なんですね。
たとえば・・・
Bernstein in Vienna: Beethoven Piano Concerto No. 1 in C Major (1970)
この動画は、バーンスタインがピアノ協奏曲第一番を弾き振りしたものです。
(弾き振り=指揮者が独奏を兼ねて演奏するスタイルのこと)
該当の楽譜の箇所は動画の8:15~のところになります。
そしてこちらも。
Daniel Barenboim: Beethoven Piano Concerto No. 1 in C major Op. 15
こちらは同じく弾き振りの演奏動画になります。
ダニエル・バレンボイムによる演奏となります。
動画でいうと該当箇所は7:44~あたりですね。
赤い丸のところの違い、わかりますでしょうか?
「ソシラ」という音が、
バーンスタインの場合は記載通りの8分音符での演奏に、
バレンボイムの場合はそれよりも少し早い16分音符を想定した演奏です。
こうした装飾音符も含めて独奏はソリスト(独奏者)によって解釈は様々です。
どちらが正しいか間違っているか、という判断基準ではなく、
どちらがより聞き慣れているか、あるいは聞きやすいか、
という判断で考えるべきだと思うんですけど、
私が嫌うクラオタの方は白黒つけたがる人種が多いので、
「こっちが正しい」「いや、こちらのほうが自然だ」
というどうでもよい論争までしでかしそうになることが多いです。
私はバーンスタインの独奏を最初に聞いたので、
8分音符のテンポの方が聞き慣れています。
が、世間一般的にはこうした装飾音符表記だと、
バレンボイムのような演奏をする方が圧倒的に多いみたいです。
というか、バーンスタインのように奏する人を聞いたことがありません(笑)
さっきも書いたように「どっちが正しいか」ではなく、
これは奏者の解釈如何だと私自身は思っています。
これを「異端」「正統ではない」というバカげた理由付けをして、
演奏全て否定するような人間にはなりたくないです。
おっと、思わず感情的になりそうでした・・・(笑)
たまたま今朝この曲を聞いてふと思ったので書いてみました。
飾り付けは人それぞれ、楽しむ余裕が欲しいものです。