誕生日とか結婚記念日とかそうしたお祝い事のある時、
あまり「これ!」と決めて贈り物をしない人です。
アメリカに留学していた頃は、
それこそ毎日のようにパーティみたいなことがあるのかな、と思ったら、
実は日本とそれほど大差はなくて、
何かしらの記念日めいた時に知り合いや近所の人たちを招いて、
ささやかなホームパーティを開いてた記憶があります。
(数十年前のことなので今はわかりませんけどね)
日本のサブカル好きの音大の友人がそうしたお祝い事の席で、
フロアにあったピアノ(調律してないやつです)で、
日本のサブカルの曲を適当にアレンジして演奏してくれたんです。
私が好きなゲーム(DQ、ゼルダなど)も演奏してくれましたし、
その当時、日本で放映されていたテレビアニメの主題曲など、
私よりもサブカルに精通していることを自慢するかの如く弾いていました。
「形の無いものをお祝い事で提供するのが私たちにできることだ」
と宣言してはばからなかった友人ですが、今もそのスタンスは変わらないようで、
私の誕生日には決まって演奏動画を送ってきてくれます。
もう結婚して子供も二人いるというのに、
子供たちそっちのけで日本のアニメやゲームに耽溺している姿を見て、
時折奥さんから「なんとかしてよ」と、
さも私のせいかのごとく言われてしまうこともしばしばですが(笑)
私が日本に帰ってきてはじめて誕生日を迎えた日の夜のことでした。
アメリカからのエアメールが届いたんです。
そこには一枚のCDが封入されていました。
そして少し癖のある字でこう書かれていました。
「私からのプレゼントです。聞いてみてください」と。
CDの表面には特に何も文字は書いていなかったんですが、
プレイヤーにセットすると時限爆弾になってるのか、
とかアホな妄想もしつつプレイヤーにセットして再生すると・・・
私が大好きなジャズのスタンダードナンバーが流れてきました。
弾いているのはもちろん送ってくれた本人です。
こういう贈り物に当時慣れていなかった私は、それを聞きながら号泣していました。
粋なことをしてくれるじゃねーか、とも思いましたけど、
純粋に自分のためだけに演奏してくれていることに感動したんです。
そりゃ惚れます(笑)
(念のために言っておくとそういう趣味は全くないです)
それから時代は移っていきましたが毎年のように彼から贈り物が届きます。
誕生日だけではなくお祝い事があるたびに、です。
エアメールからネット動画に媒体は変わっていきましたけど、
そこに込められている想いは十数年経った今でも変わらないです。
そりゃプロのジャズピアニストだから技量は格段に上がってますけどね。
初めて聞いたときは号泣しましたけど、
さすがにこれだけ年を経ると、でもやっぱりホロリとしてしまいます。
私がボストンへ行くときに、
彼のリクエストに応じてアレンジした楽譜を作っていくのも、
こうして彼からたくさんの想いを受け取ったからです。
その恩返し、というとキザに聞こえるかもしれないですけど、
ずっと友達でいてくれることに、ただただ感謝しかありません。