音楽つれづれ日記

音楽好き、飽き性、そして中庸思考。

愛のある編曲、愛のない作曲

最近よくこういう言葉を聞きます。

「愛のあるホニャララ」というフレーズです。

 

その昔、私が編曲の仕事をしていた頃は、

自分自身はその曲に愛をもって接していたつもりでいたのですが、

今、その完成された曲を聴いてみると、

「ああ、これは作業編曲になってしまってますわぁ・・・・」

という気持になってしまいます。

つまり、愛の無い編曲ということですね。

 

海外の音楽学校へ行って、帰国してからやった仕事というのが、

カラオケの「オケ」の製作であったり、演歌やポップスの編曲でした。

それこそ流れ作業のごとくやっていた20代でしたから、

そこに愛をこめていたか、と言われるとなかなか断言しづらいものもあります。

 

編曲に愛は必要でしょうか。

作曲に愛は不要でしょうか。

 

 

編曲とは、作曲者が作った珠玉のメロディに対して、

いろいろと手を加えていくという作業です。

(細かい話はいろいろとあるんですが、大雑把に言うとこういう仕事です)

作曲者の思いの詰まったメロディでありコード(和音)を、

活かすも殺すも、この編曲という作業にかかっていると言っても過言ではないです。

 

どうしても小手先のテクニックに頼ってしまって、

その楽曲への愛が不足しているな、と作り終わってから感じたこともありました。

会心の出来だと自分で納得した編曲が、ものの見事にボツを食らったこともありました。

 

愛にもいろいろな形はあります。

原曲に対する編曲者本人のリスペクト愛。

その作曲者の作品全般に対する愛。もしくは作曲者本人への信頼愛。

そして、音楽に対する形容しようのない特別な愛。

それぞれ形は違うとは思いますが、編曲にも愛は必要かもしれません。

 

私が編曲の仕事をしていた頃、

それはそれはたくさんの作曲家の方々のデモテープを聞きました。

 

ちなみに、デモテープというのは、

作曲家の人が作ったメロディを様々な形態で奏されているテープのことで、

歌手が歌を覚えるときに使われるものや、

私のような編曲家へ聞かせるためのものもあります。

きっちりと楽譜に書き込みをしてくる作曲家の方もいれば、

ギター一本で朗々と歌い上げているテープのみ送られてくるということもあります。

また、電子楽器やパソコンなどを使用して、

イントロから最後まできっちりと作られているデモテープもありました。

 

そんなデモテープ、たくさん聞いていると、

その作曲家の人たちの癖みたいなものがおぼろげながらわかってくるんです。

そんな時に、とある作曲家のメロディを聴いたときにふと思うわけです。

「この人、音楽に対して愛情を持っているのか」

例えば悪いかもしれませんけど、

お風呂場で鼻歌まじりに作ったような、極薄のメロディと感じたんです。

もちろんそんな本音を押し殺して編曲作業をするわけですけど(笑)。

ただ、こういう愛の無い作曲を見たり聴いたりしてしまうと、

テンションはあまり上がりませんし、やる気も削がれてしまいます。

結局そのデモテープから編曲作業をするためにメロディやコードなどを譜面に書く時、

指定されているコードをあえて外してみたり、

通常そのジャンルではあまり使わない音を使ってみたり、

いろいろと編曲作業を通して抵抗を試みることもありました(笑)。

 

こういう感情的なところがあるからプロとして成功しなかったんでしょうけどね。

 

プロデューサーなどの方向性を決めることの出来る人たちの意向で、

いろいろと制約もある業界ではあったんですけど、

結構自由にやらせてもらってたことだけは嬉しかったですね。

愛の無いメロディに愛を加えていく作業、とでも言えばかっこいいんでしょうけど、

ピアノやキーボードなどの音が出るものがひとつもないところで、

ベルトコンベア式にずっと楽譜書いてただけでした(笑)。

 

というわけで、懐かしいお話の一節でした。

ジャミロクワイの新しいアルバムを聴く

「AUTOMATON(オートマトン)」というタイトルも意味深ですが、

私のような、初期の作品愛好家からすると、

ここ最近の彼の音楽性、というよりも、千変万化なサウンドに戸惑うこともあります。

嫌いじゃなくて好きなんですけどね。

どのアルバムも良いところはありますし。

 

「The Return Of The Space Cowboy(スペース・カウボーイの逆襲)」は、

たぶんCD擦り切れるくらい聴き込んだ作品ですので、

やはりジャミロクワイAcid Jazzという印象は崩れてないです。

ただ、そういう印象が強い人(つまり古いファン)からすると、

ここ最近、といっても今回のアルバムは7年ぶりのアルバムで、

前作となると2010年リリースとなってますが(笑)、

ここ最近のアルバムは賛否あるみたいですね。

 

オートマトンGoogle Play Musicで何度か聞いてますけど、

相変わらずヴォーカルのJason Kay(JK)の歌声は心地よいですね。

今作もちゃんとCD買って聴き込んでみようと思います。

 

Automaton

Automaton

 

 

Johnny Griffin / Way Out【ジャズのススメ 26】

このアルバム、私の周りではあまり知られてないみたいですね。

ジョニー・グリフィンは割と知ってる人多いんですけど、

このアルバムはスルーしてるんでしょうか(笑)。

ハードバップ(ジャズのジャンルのひとつ)でいうと、

このアルバムもかなりクオリティ高いもののひとつだと私は確信してます。

 

Way Out

Way Out

 

 


Where's Your Overcoat, Boy.wmv

 

これ、アルバムの一曲目に入っているんですが、

テナーサックスの響きの渋さ、とでもいうんでしょうか。

聞いてて飽きのこない音とでも言えばいいのでしょうか。

よくわかりませんけど(笑)。

ケニー・ドリューのピアノがまた良いんですよね。

オーソドックスなサウンドといえばそうかもしれませんけど、

ものすごく屋台骨がしっかりしている感じ、

と言えばわかりやすいでしょうか。いや、わかりにくいか(笑)。

 

まあ、とにかく良いものは良いということで。

藝大ゲームサウンドオーケストラ -FINAL-

行ってきました、藝大ゲームサウンドオーケストラ(以下GSO)。

藝大、つまり東京藝術大学のことなんですけど、
その藝大で毎年秋行われている文化祭「藝祭」というのがあって、
2年前の9月にこの第一回の公演が行われました。
このことについては以前ブログでも書いてます。(詳細はこちら

そしてその翌年の藝祭でもゲーム音楽の演奏会がありました。
名前をゲームサウンドアンサンブルと変えて、
小編成による楽曲の演奏が行われたんですね。こちらもとても良かったです。
この公演についても以前のブログで書いてます。(詳細はこちら

この公演以前にも藝大でゲーム音楽の演奏されていたそうなのですが、
(どうやら公式ではないみたいですけど)
私が参加したのはこの藝祭での2公演が初めてでした。

そんな好評を博した藝祭GSO(GSE)の公演が今回で最後となるそうです。
ブログのタイトルにもある通り「FINAL」ということらしいです。
なんとも寂しい限りですね。
昨年秋のGSEのような小編成ではなく人数も大規模になり、
和楽器も加わって、非常に色彩感のある演奏を聞かせてくれた今回の最終公演。
とても楽しく、感動的なものとなりました。


藝大ゲームサウンドオーケストラ -FINAL-
2017年3月29日(水)
開場18:30 開演19:00
東京藝術大学奏楽堂

(演目)
第一部「大神」


タイトル
プロローグ
大神アマテラス復活
神州平原
ウシワカのテーマ
ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ


骨鏃の破天矢
クシナダを乗せて
スサノオ登場
ヤマタノオロチ退治 其の二
神木祭り


両島原
シャチ丸のテーマ
龍宮
神木村の悲しい風習
双魔神モシレチク コタネチク退治


約束
常闇の皇
「Reset」~「ありがとう」バージョン~
太陽は昇る


休憩15分


第二部「風のクロノア

第一楽章
AND I BEGIN TO WONDER
DARKEN
THE WINDMILL SONG
MINE OF LIGHTS
GHADIOUS APPEARES
THE RONGO LANGO
GRANPA'S CHAIR

第二楽章
MELANCHOLY SOLDIER
JUGPOT FALLS
THE RUIN'S AIR
BALADIUM'S DRIVE
FOR THE TIME WE'VE SPENT
FRY OVER THE WIND

第三楽章
UNTAMED HEART
DIFFICULT TO SAY
THE CLOSING ENCOUNTER
THE RING
ADVENT

第四楽章
PEACEFUL MOMENT
I'M ON YOUR SIDE
FAREWELL
RESURRECTION
STAFFROLL


こうして演目を改めてみてみると、内容濃いですよね。
少なくとも私は思いました。

近年、ゲームサウンドを演奏する団体がプロ・アマ問わず増えていて、
タイトルに特化せずに様々なゲームのいいとこ取りみたいなプログラムで、
お客さんを楽しませるところも多くありますけど、
今回のGSOのように、タイトルをひとつ、もしくは少数に絞って演奏することで、
つまみ食いではなく、本格的なディナーのごとく、
そのゲームの音楽の良いところをたくさん聞くことが出来るって良いもんです。


実はこの公演、私の友人と一緒に見たんですよ。
その友人は冷静に見ていた印象だったんですが、
私といえばもう、大神のラスト10分くらいずっと泣いてたし、
風のクロノアに至っては四楽章始まってしばらく泣きっぱなしでした(笑)。

というわけで。

前半は大神でした。
ネット動画のゲーム音楽ランキングでも必ず上位に入っている、
ラスボス曲(後半)「太陽は昇る」があまりにも有名なんですよね。

かいつまんで大神のことを少し紹介すると、
主人公である大神アマテラスが、やや強引に相棒となった小人イッスンとともに、
ナカツクニと呼ばれる世界をくまなく探索しながら、
敵と闘ったり、村を救ったりしていくアクションRPGの傑作です。


今回の藝大GSOの公演ではフルオケに加え、さらに和楽器群を導入。
津軽三味線、箏、尺八、篠笛、能管、打ち物、小鼓が入り、
かなり和風な音色で仕上がっていました。
奏楽堂のステージの奥にオーケストラが、
そしてステージ前方のスペースに和楽器が配置されていました。
音量バランスの配慮もあったと思いますが、客席からも和楽器の様子がよく見えて、
私はすごく嬉しかったことも書いておきます。

大神の最初、といえばタイトル画面の「おおかみ~!(エコー)」という声とともに、
デデンという音色で始まるんですけど、
そのデデンではなく、尺八の音色から始まります。
そこからオケが加わり音色がだんだんと大きくはっきりとしてきます。
この最初のタイトル~プロローグ~アマテラス復活あたりの流れは、
それほどしつこくなく、あっさりと過ぎていった印象でした。
いや、悪いというわけではなくて、かなり私好みの始まり方です。

そして最初のフィールド曲でもある神州平原に入ると、
和楽器の打ち物がさらなる活躍をし始めます。
このあたりで指揮を担当されている八木さんがかなり慎重に振っていた印象です。
打ち物が少しテンポを上げそうになるところを、
少し抑えて、とでもいうかのような手振りの指揮を見ました。
得てしてリズム体というのは、早くなったり遅くなるとそのズレが顕著に演奏に出ます。
それを八木さんが丁寧な指揮でコントロールしているように見えました。

このあたりまでの印象は、かなり原曲を意識した編曲だなということですね。
私も大好きなゲームの一つでもあるので、サントラもかなり聴き込んでますが、
その音色をオケと和楽器で見事に表現している、という印象を受けました。

さらに楽曲は進み、ウシワカのテーマ、そしてウシワカ演舞へと移ります。
原曲でも三味線、尺八や笛の音色が登場しますが、
今回の公演では実際に津軽三味線、尺八や篠笛、能管が使われています。
原曲の音色にかなり近づいた印象を持ったんですが、
ウシワカのテーマはまさに原曲そのもの。
その後のウシワカ演舞も、あのシーンを彷彿とさせる再現度で、
私のココロはヒートアップしていきました(笑)。


大いに盛り上がった「一」が終了し、「二」が始まります。

実は今回の公演、舞台にスクリーンが使われています。
多くのゲーム演奏会だと、実際のゲームの動画であったりが映し出されるんですが、
今回の公演では実際のゲーム画面は一切登場しません。
いろいろと複雑な事情があるとは思うんですけど(笑)。
スクリーンには曲のタイトルが文字で映し出されていました。
しかし、その文字のフォントであったり装飾であったりといったものが、
ゲームをしている人なら「ああ、なるほど」と頷ける演出だったんですよね。
たとえば「ウシワカ演舞」のときには、
実際のゲームキャラ登場のときに使われていたあの迫力あるフォントを真似て使用してましたし、
後半の「約束」という曲では、
主役級のキャラ(ものすごく小さいキャラ)が飛び跳ねてる、
といった演出だったり。
実際のゲーム画面は見られなくとも、文字と装飾と光の動きでゲームを表現する、
とても斬新かつ良い演出だったな、と私は思います。


この調子で書いていると、ブログがかなり長くなりそうなので、
ここから先は少々かいつまんで書いてみます。


「二」で印象的だったのは、
クシナダを乗せて」、「神木祭り」あたりでしょうか。
クシナダの方はかなり切迫感のある楽曲なのですが、
オリジナルに近いアレンジもあり、ちょっと涙ぐみそうになりました。
あと、神木祭りはスクリーンに花火が上がってとても華やかでしたし、
笛の透き通った音色にオーケストラの響きが加わって、
本気で泣きそうになりました。いや、泣きました。
このクシナダの演奏のときに思ったんですけど、
八木さんの指揮ぶりがとっても熱かったんですよね。
身体全体を大きく使って、丁寧に指揮をされていました。
前々回で指揮棒を盛大に落とすというハプニングがありましたけど、
今回は指揮棒握ってなかったんでしたっけ?
(席が中央後方よりだったので見えなかった・・・w)

「三」で印象的だったのは、
双魔神モシレチクコタネチク退治ですかね。
シャチ丸のテーマ~龍宮へと移っていくときの音色がとても儚げで、
そこもうっとりして素晴らしかった印象だったんですけどね。
両島原もかなり熱い演奏でしたし。
ただ、一風変わったアレンジという意味で双魔神退治の曲がかなり面白かったです。
たぶんラチェットという楽器だと思うんですけど、
釣りで使うようなリール状のものを回して、
「ガガガ」という大きな音がなる楽器が使われてたんですよね。
しかもかなりフレーズで。少し邪魔かなとも思いましたが(笑)。
でも、原曲でも時計の機械音が使われていましたし、
楽曲全体を通してみても迫力のあるいい演奏でした。

「四」はほぼずっと泣いてました。
約束~常闇の皇~RESET~太陽は昇るという流れを演奏会で聞いたのは、
たぶんこのGSOが初だと思います。
通常のゲーム演奏会では「太陽は昇る」を単独で演奏、
もしくはその前の「Reset」とセットで演奏されることはあったと思いますが、
この並びで演奏されたことはたぶん私が知っている中ではなかったと記憶してます。
(あったとしたらすいません・・)
この「四」は本当にすごかった。迫力も申し分なく、演奏も素晴らしかったです。
リズムがずれそうになりかけてましたけど。
RESETがかかるシーンはかなり名シーンですよね。
スクリーンでも幸玉を思わせる光のたまが多数登場してましたし、
その演出だけでもう号泣です(笑)。
太陽は昇るはいわずもがな。負ける気がしないとはまさにこのことですね。


ちょっと語らせてください。
この太陽は昇るという楽曲は、私も大好きな曲のひとつです。
相棒イッスンのあの名シーンのあとにこの楽曲が流れるわけですけど、
もうね、この曲泣けるんですよ。いろいろと思い出しちゃって。
それは楽曲自体のクオリティにも起因することなのですが、
実はこの曲、後半で使われている楽曲が「サクヤ姫のテーマ」なんですね。
少しテンポが変わってますがそのまんま使われてます。
序盤に登場するキーマンの一人、サクヤ姫。
アマテラスをナカツクニに蘇らせた神の一人であり、
超グラマラスバディの持ち主でもある姫のテーマが、
このラスボスの楽曲に使われている、というのはとても意義深いものを感じます。
だからこそこのカタルシスに人々は魅了されるのだろうなあと。
楽曲それ自体でも十分楽しめますが、
ゲーム「大神」を最後までプレイして、改めて楽曲を聞くと、
また一味違う面持ちで聴けること間違いなしです。
なので、皆さん「大神」プレイしましょう(笑)。
(現在Wii版、PS2版、PS3版(絶景版)が発売されてます)

長々と失礼しました。


そして太陽は昇るのあとに小メドレーが演奏されました。
楽曲全ては把握してないんですが、
ウシワカのテーマ等が入ってたのはわかりました(笑)。

今回の大神の編曲を担当されたのは、
前回の藝大GSEファイナルファンタジーの楽曲編曲を手掛けた方だと記憶しています。
今回の大神の編曲、かなり大変だったんだろうな、と思いました。
和楽器が入るというだけでも大変なのに、
ゲームの音楽ということなので、原曲にどこまで近づけるべきか、
という命題を同時に突きつけられるわけで、そのあたりの葛藤もあったと推察します。
(葛藤してなかったのだとしたらすいませんw)

和楽器雅楽、つまり日本の昔の音楽を演奏するために作られてます。
逆に考えるとクラシックやロックなどの西洋的音階を有した音楽を演奏するには、
和楽器というのは不向き、とまではいいませんが、
かなりの演奏技術が要求されるものである、と私は考えてます。
確か、討鬼伝という和風狩ゲーの音楽を担当された坂本さんも、
たしかそのような主旨のことを仰ってたと思います。
なので、和楽器の方々、特に三味線、尺八、笛などを担当された方は、
かなり大変だったんだろうな、と推察します。ご苦労様でした。
もちろんそれと同等に、オケのメンバーの皆さんも大変だったと思いますが。


前半の演奏についてはいろいろと思うところが多少あったことはあったんですが(笑)、
それでもこの大神の楽曲群の演奏から発せられる、
奏者、スタッフ一体となったエネルギーみたいなものは十二分に感じられました。
もう一度聴いてみたいと本気で思いましたが、
これでいいのかもしれませんね。
まさに一期一会の音楽、堪能いたしました。


と、ここで休憩を挟んで後半へ。
いよいよ風のクロノアです。

・・・なんですけども。

舞台上に登場したのは、
藝大GSOの企画、そして指揮、さらには編曲も担当された八木さんです。
登場したのは良いんですが、スポットライトが別のところに当たっていて、
慌ててそこに移動する八木さん、可愛らしかったです(笑)。

緊張した面持ちで登場した後、ゲストのご紹介がありました。
ゲーム「風のクロノア」で音楽を担当された井村絵里子さんです。
ナムコ在籍時に多くのゲームで音楽を担当された井村さん。
風のクロノアでも音楽制作の中心として活躍されたそうです。
井村さんを含めて8人?くらいの音楽スタッフが動員されたとのこと。
ものすごく緊張されている八木さんと対照的に、
井村さんは純粋に今回のGSOを楽しんでいらっしゃるようで、
前半の大神の演奏に大興奮だったご様子(笑)。
井村さんのこの時のリアクションも、八木さんと同様に可愛らしかったです。

唐突に始まったこのトークですが、最後も唐突に終わった印象です。
井村さん、もっと喋りたかったのかもしれませんね・・・
そして、気がつくとピアノがステージ中央に移動していました。
いわゆる「ピアノ協奏曲」が演奏されるときのスタイルですね。
オケの前にピアノが鎮座している、まさにあの状態です。


さて、ここでちょっとお話をしなければなりません。

約2年半ほど前に「室内楽による765の調べ」と題して、
室内楽ナムコ製作のゲーム音楽の演奏会が催されました。
主催はMelodies Of Crystalというゲーム音楽演奏団体、
そしてその代表が、今回の演奏会でチェロを担当されている大澤さんです。
大澤さんのことは以前のブログで何度か触れておりますが、
ゲーム音楽への愛が相当深いであろう、と推察できるくらいに、
愛情の深いアレンジをされることでも有名な御仁です。
そして、以前このブログでもこの演奏会のことについて記事を書きました。
(「室内楽による765の調べ」の感想ブログはこちら
そこで大澤さんが室内楽として編曲されたのが「風のクロノア」だったんですね。
今回のGSOで配られたパンフレットに、
大澤さんとGSOの八木さんの対談が載っているんですが、まだ読んでません(笑)。
たぶんこのことも書いてあると思います。
(先にパンフ読んでから記事書けよ、という声もあると思いますが黙殺しますw)


風のクロノアのゲームについて少し書いておきましょう。
今から20年ほど前にPlayStationで発売されたアクションゲームです。
井村さんが演奏前におっしゃってたことなのですが、
当時のナムコのゲームでちゃんとしたストーリーを持ったゲームを開発してなかった、
ということもあり、きちんとストーリーのあるゲームを作ろう、
ということで開発が始まったのだそうです。確かにストーリーは秀逸です。
アクションも徐々に難しく、またパズル要素も少しあるので、
なかなか先へ進めずイライラしたことも、昨日のことのように思い出します(笑)。

ええ、演奏会前日にサントラで予習しましたから(笑)。

獣人の少年クロノアがリングの妖精ヒューポーとともに冒険するアクションゲームです。
まあ、それだけじゃないんですけど。色々書くとネタバレ書きそうなので(笑)。
可愛らしい容姿のゲームですが、実は結構ダークなところもあったりします。
ラストは涙なしには見られない、かどうかは人によりますけど、
意外な展開でインパクトはかなりあると思います。

最初に演奏されたのはAND I BEGIN TO WONDERというピアノ曲
原曲でもかなり短めの楽曲ですが、
ここで登場したムービーは、ゲームを知る人が見たらニヤリとしたはずです。
映像では中央の白い丸が淡い光を放ち、そこに上から白い輪が緩やかに下りてきます。
そうです、あれです(笑)。
まあ、主人公の一人ヒューポーがリングの精であることを考えると、
あの白い輪が何を意味しているのかは想像がつくと思います。
そしてこの短いテーマが、実は重要な要素となってくるんですが、
この話はまた後ほど。
そしてDARKEN。不穏な響きの楽曲です。
この2つの曲の流れで、ピアノとオケのタイミングが少しずれてた気がしたんですが、
まあ、そんなことはともかく、この後に晴れやかな旋律が登場します。
THE WINDMILL SONGです。
これものちに語りますが、このメロディやリズムが形を変えて出てきます。
このゲームのメインテーマのひとつといってもいいと思います。
(もう一つは先に話したピアノ曲です)
後半の変拍子がとっても心地よいです。
この楽曲、中盤にギターが活躍するんですけど、
そこをピアノで置き換えて演奏していたので、ピアニストさん大変そうでしたね。
変拍子で早いパッセージですから。
もう、この曲大好きなんですよ。
2年半前にも聴いたはずなんですけど、そっちはあまり憶えてないという(笑)。

そうなんですよ、このゲームの楽曲って、ギターが活躍する曲が多いんですよね。
だからピアノとオケで編曲するのは大変だったろうと思います。

MINE OF LIGHTSは先のTHE WINDMILL SONGSに続くステージの楽曲。
洞窟だか採掘場だか、どっちか忘れましたが、確か暗いステージだった記憶です。
こちらもさっきの楽曲と同様に変拍子が特徴的な楽曲ですね。
というよりもTHE WINDMILL SONGSのアレンジともとれます。
ま、どっちでもいいんですが、原曲の幻想的な雰囲気を、
オケとピアノで表現されてた気がします。難しい楽曲ですけど。

GHADIOUS APPEARESは、ガディウス登場の時に流れた楽曲。
不敵に笑うガディウスが目の前にあらわれます(笑)。
実はこの曲、地味に好きなんですよね。
そして続いて中ボス戦の楽曲、THE RONGO LANGOです。
クロノアのボス戦ってちょっと独特なんですよね。
回っているコマを想像していただけるとわかりやすいんですが、
そのコマがボス戦のステージになってまして、
クロノアの移動に合わせてそのステージがコマみたいに動くんですね。
で、それを文字だけで表現したのがスクリーンに映し出されたあれです(笑)。
「THE RONGO LANGO」という文字が3D表記の円状になっていて、
それが不規則に回っているというシュールな映像です。
ああ、よくこれ作ったなあ、と感心しきりでした。
その後に続くGRANPA'S CHAIR。
クロノアと一緒に住むじっちゃん(グランパ)の曲ですね。
まあ、この後あれなんですけど・・・
ピアノで奏でられる旋律が胸を打ちます。

とここで第一楽章終了。
ここからは大神と同じく印象に残った楽曲をかいつまんで。


MELANCHOLY SOLDIERは可愛らしい楽曲ですがこちらも変拍子
そうなんですよ、クロノアの楽曲って変拍子が多いんです。
あと、転調もかなり多い感じですね。
だからこれだけ楽曲が愛されているってことなのでしょうか。
実はこの曲の出だしが某RPGの街の曲を想起させるんですが、
ま、それはそれとして。

THE RUIN'S AIRは大好きな楽曲です。
というのもこの曲も先に言ったTHE WINDMILL SONGSのアレンジだからです。
いや、それだけじゃないんですけど(笑)。
不穏な響きの中から現れるWINDMILLのイントロがひときわ輝いて聞こえてきます。
そしてこの曲もご多分に漏れず変拍子が心地よい楽曲です。

BALADIUM'S DRIVE(ボス曲)に続いて、
FOR THE TIME WE'VE SPENTです。
とあるイベントの曲なんですが、
あれですよね、この曲、GRANPA'S CHAIRのアレンジなんですよ。
こちらのほうがテンポがゆっくりです。
このメロディの演奏でそのイベントのことを思い出して泣きそうになりました。
GRANPA'S CHAIRのところでゲームのことを思い出して、
ここでノックアウト、という感じですね。
この曲に続いてFRY OVER THE WINDです。
こちらも興奮させる演奏で涙腺を刺激してくれました。
何の曲だったか忘れましたけども(笑)。

第三楽章です。
UNTAMED HEARTです。こちらも幻想的な楽曲ですよね。
スクリーンに表示された文字ごとに色が変化していく演出がニクらしいですが、
それよりもこの楽曲に登場するピアノの旋律に注目です。
そう、この曲最初に登場したピアノ曲なんですよね。
ここの演奏、とても心地よかったのを覚えています。

DIFFICULT TO SAYでも最初のピアノ曲が登場します。
ゲームではかなり重要なシーンで使われます。
「言いにくいこと」という題名からも分かる通り、秘密が明らかになり始めます。
このシーン、驚きと同時に変な気持ちになった記憶がありますね。
そして、THE CLOSING ENCOUNTER、最終ステージの楽曲です。
実はこの曲の後半で使われているメロディがTHE WINDMILL SONGSなんですよね。
しかし、このバリバリテクノっぽい楽曲をよくオケで編曲したなぁと感心しきりでした。
かっこよさは損なわれること無く、興奮しまくってました。

と、この辺で気づいたんですよ。
THE RINGあたりからそのままサントラの流れと一緒だってことに(笑)。
だから第三楽章から第四楽章に入る時に休憩を挟まずそのまま演奏したんですね。
(専門用語でこういう風に切れ目なく演奏することをアタッカ<Attacca>といいます)
THE RINGは戦闘曲らしくかなりアグレッシブな編曲が楽しめた楽曲です。
演奏してる側はかなり大変だったと推察しますが。

ここから一気にSTAFFROLLまで流れるように展開していきます。
この流れを表現したかったからこそ、この順番で演奏したのでしょうし、
アタッカで一気に演奏したのでしょうね。
PEACEFUL MOMENT、I'M ON YOUR SIDEともに登場する旋律は、
一番最初のピアノ曲です。朗々と歌い上げるようなピアノの旋律が印象的。
そしてFAREWELL。最後の最後で驚かされることになるシーン。
ここで奏でられる音楽はFAREWELLというタイトルとは裏腹に切ないです。
そしてその後につながるRESURRECTION。
ここでヴォーカルが入ります。
歌い手さんが原曲を意識してビブラート控えめだったのも嬉しかったですが、
もうね、この音楽のシーン思い出して号泣ですよ・・・ええ。
シンプルなメロディの歌声にピアノの伴奏がとても映えます。
STAFFROLLは、ヴァイオリンとピアノの二重奏。
いやぁ、これも素晴らしかったなぁ。
コンミスとピアニストのアイコンタクトがちょっと見てて微笑ましかったのと、
やはりここでもゲーム画面を思い出して泣いてました。



アンコールはクロノアと大神の小メドレー、だったと思います。
神州平原や太陽は昇る、そしてTHE WINDMILL SONGSなどが聞こえてきました。
泣いてて分析どころではなかったので、正解は主催の方に今度聞いておきます(笑)。


実はここからゲームサウンドのことを少し語ろうかな、と思ったんですが、
気がついたら結構な文量になってたのでやめときます(笑)。
私のゲームサウンド観については、昨年の藝大GSEのブログにも書いてますし、
そこからそれほど考えとしてはブレてはいないと思いますので。
ただ、だいぶひねくれ度合いが減ってきたかな、という印象です。
素直にゲームサウンドを聴くことが出来るようになったのは喜ばしい限りです。

企画の八木さん、本当にお疲れ様でした。
あなたのゲームサウンドに対する熱すぎるほどの愛情を感じることができました。
これからもその愛情を紡いでいかれることを切に期待しております。

そして和楽器を演奏された皆さん、ピアノのソリスト、ヴォーカルの方、
さらに、大神のアレンジを担当された方へ。
あえて名前を書かなかったのは私の良心によるものです(笑)。
おおっぴらに名前書いていいのであればバンバン書いたんですけど。
もしも書いてよいのであればTwitter経由でもいいので連絡ください。
都度修正します(笑)

そしてスクリーン演出をされた方々へ。
様々な制約のある中であれだけ想像力を掻き立ててくれる映像を作り上げたのは、
賞賛に値すると私は思っています。素晴らしい演出でした。

そして、裏方の皆様。席の誘導や列の形成など、
いろいろと細々と動かれていたのを私はちゃんと見てましたですよ。
入場無料とはいえ、これだけ立派なホールで演奏会を開くわけですから、
運営もきちんとやらないと、という気合を感じることができました。
お疲れ様でした。

演奏技術もあり、アレンジもとても素晴らしく、
まあちょっと失敗もありましたけど、それでも楽しく演奏を聴くことができました。
大神とクロノアという私の大好きなゲームたちの音楽を演奏していただき感謝です。

皆様、本当にありがとうございました、そしてお疲れ様でした!!


Robert Glasper / In My Element【ジャズのススメ 25】

ロバート・グラスパーの演奏を生で聞いたんですよ。

そこからファンになってしまったんですけど。

「新世代のジャズ」なんていう人も多くいますけど、

ちゃんと古典的なジャズを自分なりに昇華した上できちんと自分の音楽を奏でている、

まさに今を代表するジャズピアニストの一人ではないか、と思ってます。

 

In My Element

In My Element

 

 

アレンジが独特ですよね。聴いてて飽きることがないです。

鍵盤を滑るような軽いタッチのピアノの音色は、聞く人を選ぶかもしれませんけど、

私はこういう音色も好みなので、全く問題なかったです。

 


Robert Glasper - G & B

サー・アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル(3/21@初台)

初めて彼の演奏を聴いたのは3年前、2014年のことです。

 

サントリーホールでのベートーヴェンピアノ曲3曲演奏。

前半のピアノソナタ32番c-mollや6つのバガテルももちろん素晴らしかったですが、

後半に演奏された大曲「ディアベリの主題による33の変奏曲」は、

1時間ほどの長い曲にも関わらず時間を感じさせない、まさに至高の演奏でした。

そしてその演奏後のアンコールで、

バッハのゴルドベルク変奏曲のアリア、

そしてベートーヴェンピアノソナタ30番を全曲演奏したんですよね。

アンコールの長さに定評があるという噂は知っていたのですが、

まさかここまで演奏してくれるとは、という思いが心を満たし、

号泣したのを今事のように思い出します。

 

類まれなるピアニスト、サー・アンドラーシュ・シフ

3年前に感動した演奏の記憶もそのままに、

久しぶりにシフの名演奏に触れることができました。

 

 

(3/21 演目)

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ハイドン:ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob. XVI:51
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959
※休憩なし

 

Last Sonatasと題された公演なのですが、

作曲家が最後に書いたピアノソナタを演奏する、という主旨です。

私が参加した昨日の公演は「最後からひとつ前の作品」群。

後日同会場にて行われる公演は「最後の作品」群。

両方行きたかったのですが、諸般の事情で行けませんでした・・・

ただ、私が好きなベートーヴェンピアノソナタ第31番を聴ければいいや、

という軽いノリで当日参加したことは秘密です(笑)。

 

シフの演奏って一言で言うと「耽美」ということになるんでしょうか。

ここに入る言葉は個人個人で違うとは思うんですけど。

一流のピアニストであることは間違いないわけですが、

技巧的というよりも抑制した情熱みたいなものを私は感じたんですよ。

奏法から感じる旋律の美しさとその情熱が絡まって、耽美という言葉に行き着いた、

というまどろっこしい話はおいといて。

 

 

最初に演奏されたモーツァルトソナタから心がきゅんとしてました。

晩年のモーツァルトの作品というのは、

全盛期と比べて派手さが控えめで、清澄な響きに溢れたものが多い印象です。

このK570もその傾向が強い作品です。

楽譜通り演奏しただけではその魅力を伝えることができない難曲でもあります。

そのあたりの心配はシフの演奏では微塵も感じないんですけどね。

安心してモーツァルトの世界に耽溺することができました。

 

モーツァルトソナタ演奏後に観客から大きな拍手がおこり、

シフが立って一礼した後、通常であれば一度舞台袖にはけるところなのですが、

彼はそのまま椅子に座り直し、おもむろに次のプログラムを演奏し始めました。

 

2曲めはベートーヴェンピアノソナタ第31番。

私が思い入れのあるベートーヴェン楽曲のひとつでもあります。

全てが聴きどころではあるのですが、

私が「無類のフーガ好き」ということもあり、

やはり最終楽章のフーガで泣きまくってました(笑)。

最終楽章の「嘆きの歌」と言われる短調の切ないメロディから、

As-durのフーガへと切り替わる瞬間が鳥肌ものでした。

フーガの盛り上がりが一段落して再び嘆きの歌が登場した後、

先程のフーガの主題が反行(旋律が上下反転している)であらわれ、

そのまま怒涛のフィナーレへと向かうわけですが、

その切り替わりの刹那の美しさが得も言われぬものがありました。

心が浄化されていくのを感じたんですけど、私の気のせいではないと思います。

 

そして例によって万雷の拍手のあと、やはりおもむろに椅子に座り直し、

そのままハイドンピアノソナタを演奏し始めます。

 

ソナタ61番として知られているこの曲ですが、たいへん短い曲です。

2楽章構成で7分もかかりません。

しかし、そんな小品でも魅力的に聞こえてくるから不思議です。

軽やかな音色なのに荘厳に聞こえてくるハイドンの調べが終りを迎えます。

すると。そこからアタッカでシューベルトを彼は弾き始めました。

観客は拍手をする暇さえ与えられず(笑)。

 

そしてこのシューベルトがすごかった。

何がどうすごいのかと聞かれると「すごいもんはすごい」と言わざるを得ません。

このシューベルトの20番のソナタ、好きなんですよね。

晩年の3つのソナタ(19番~21番)って一括りにされることが多いんですが、

それぞれが個性のある良い作品だな、と私は思ってるんですね。

そのシューベルトの個性あふれる作品と、

シフの演奏との相性が抜群に良かった印象です。

特にフィナーレの歌うような旋律を際立たせた素晴らしい演奏は、

私の涙腺を大いに刺激するものでありました。

 

そしてブラボーとともに圧倒的な音量の拍手が爆発的に起こりました。

 

4曲をほぼノンストップで演奏、たぶん一時間半ほどだと思いますが、

それだけのことをしたわけで、私も「アンコール無いよなあ」と思ってたんですが、

以前の演奏会でソナタ1曲まるまるやってくれた彼のことですから、

淡いながらも期待して拍手をしながらアンコールを待ちます。

 

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これが3/21(火)のアンコールです(笑)。

驚きますよね、これ。

あれだけ緊張感と集中力を保った演奏をしたあとでこれですから。

 

 

余談になりますが、実は開演前にアンコールの話を、

一緒に行った友人としていたんですよ。

今回はウィーン楽派中心の楽曲でしたから、

バッハなどのバロックを聴けるとは到底思ってませんでした。

なので私も冗談で、

「アンコールでフランス組曲とかイタリア協奏曲とかやってくれないかなあ」

と言ってたんです。

そしてシューベルトの小品に続いて演奏されたイタリア協奏曲に、

二人して驚き、そして興奮してしまいました(笑)。

イタリア協奏曲、素晴らしかったです。

あれだけの演奏をした後で疲労をほとんど見せること無く、

完璧なバッハを演奏してのけるわけですから、ほんとすごいの一言です。

最初は一楽章のみ演奏して一度ピアノから離れたんですが、

そこから観客の盛大な拍手に導かれるように続けて二楽章と三楽章を演奏して、

私のハートは彼に射抜かれました(笑)。

モーツァルトの有名なソナタK545も一楽章のみでしたが堪能できましたし、

シューベルトの楽興の時も聴きたいと思っていた作品だったので、

これでもう満足、満腹状態だったわけですが、

シフは拍手に押されるようにまたピアノへと向かいます。

あれ?まだアンコールやってくれるのかしら?と思った次の瞬間、

彼は鍵盤のフタをそっと閉じたのでした。

そしてかすかな笑いとともに万雷の拍手に送られてシフは舞台袖へ。

彼のおちゃめな一面を見ることができた瞬間でした。

 

いろいろと言いたいことも多少あることはあったんですが、

そんな感情も公演が終わると同時に霧散していました。

やはり彼の演奏は動画やCDでも良いんですけど、生演奏に勝るもの無しです。

 

しばらくはサー・アンドラーシュ・シフの演奏を聴き続ける日が続きそうです。

GENESIS / Selling England By The Pound 【プログレ古今東西4】

「From Genesis to Revelation(創生期)」や「Trespass(侵入)」といった、

プログレバンドGENESISの、

文字通り創生期に発表されたこの2作のアルバムも傑作ではあるのですが、

私がGENESISでよく聞いているのはその後に発表された、

「Foxtrot」と今作「Selling England By The Pound(月影の騎士)」ですかね。

ああ「Nursery Cryme(怪奇骨董音楽箱)」も聴いてます。

これら5作品とも初期のGENESISを象徴するタイトル群です。

 

Selling England By the Pound

Selling England By the Pound

 

 

GENESISといえばピーター・ガブリエルピーター・ガブリエルといえばGENESIS

とは実はそれほど私は思ってないんですけど(笑)、

人によってはピーター脱退後のGENESISプログレじゃないだの、

そもそもGENESISプログレバンドとして認めてないだの、

ファンやファン以外のところからそういった声も聞こえてくるんですけど、

プログレじゃなかったとしてもいいんじゃない?というのが私の考えです。

音楽としての完成度が高いことは間違いないと思いますし、

そもそもプログレファンを自称する人って、

どうでもいいこだわりみたいなのを持ってる方もいらっしゃるので、

そういう意見は聞かないようにしてますし、聴きたくもありませんし、

聞くに値しないというか、聞くだけ無駄と思ってます。

 

 

ネガティブなことはこのくらいにして。

 

 アルバムの最初の楽曲から漂う初期GENESIS臭も当然心地よいのですが、

アルバム中盤の「Firth of Fifth」「The Battle Of Epping Forest」はヘビロテしてます。

まあ聴き始めると最初から最後までノンストップできき続けたくなるんですけどね。

 

このアルバムは通しで聴いてみると楽しいと思いますので買って聞いて欲しいです。